雲から山の天気を学ぼう|(37)~空を見て疑似好天とその後の天候悪化を察知しよう~

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~空を見て疑似好天とその後の天候悪化を察知しよう~

今回は、気象遭難が発生することの多い、疑似好天(ぎじこうてん)と呼ばれる一時的な晴天と、その後の天候の急変に伴う雲について解説します。
疑似好天については、第18回を併せてご覧いただくと、理解しやすいと思います。

写真1 朝から青空が広がる立山山麓
写真1のように、早朝から青空が広がると、テンションがあがりますよね。ただし、そんなときに落とし穴が待っていることがあります。朝、どんなに晴れていたとしても天気図は必ず確認しましょう。

図1 写真1の時間帯の天気図
図1は、写真1と同じ時間帯の天気図です。立山連峰付近は、等圧線の間隔が広がって風が弱いことが分かります。また、等圧線が気圧の高い方から低い方へ張り出している(緑色の破線)ため、気圧の尾根の前側に入っており、天気が良いことも分かります。
一方で、九州付近では等圧線の間隔が狭くなっています。また、等圧線の向きから日本海からの北西風が強まることが分かります。山では海から風が吹くときに天気が崩れることから、このような気圧配置のときは日本海側の山岳で荒れた天気になります。つまり、この等圧線が狭い範囲が立山連峰にかかったとき、急速に風が強まり、天候も悪化するのです。それがいつなのかを判断する必要があります。天候が崩れる前に安全な場所まで下ることができれば遭難することはありません。図1のような気象庁の予想天気図では24時間ごとの天気図しか見られないので、ヤマテンの3時間ごとの専門天気図 https://i.yamatenki.co.jp/ で確認するのが良いのですが、ここでは雲の変化から天候の悪化を予想していきましょう。

写真2 悪天の前兆となる帯状の雲

写真3 日本海の方角に悪天をもたらす雲が出現

日本海側の山岳では、日本海から天気が崩れてくることが多いです。そこで、開けた場所に出たら、日本海の方角の空を観察しましょう。写真2や3をご覧いただくと、日本海の方角(写真奥の方)に帯状の灰色がかった雲が見えます。このような雲が日本海方面に現れたら、その動きを観察します。次第に手前側に近づいてくるときは、天候が悪化する兆候です。すぐに樹林帯の中など安全な場所に移動しましょう。

写真4 天候悪化が迫ってきたときの雲

写真3のように、雲の底が暗くなっていて、厚みがある雲はやる気のある雲(積乱雲)です(やる気のある雲とない雲については第10回をご参照ください)です。写真2や3の雲が接近して写真4のような空模様になれば、悪天は間近です。この時点では、すぐに安全地帯に退避するか、安全地帯まで行く時間がなければ、できる限り風を避けられる場所でツェルトやテントを張ったり、雪洞を掘ったりして悪天に備える必要があります。

写真5 写真3の2、3時間後の様子

実際に、写真4の2、3時間後には吹雪となりました(写真5)。

このように、日本海側の山では、日本海方向の雲を見ることで、早めに悪天の兆しを察知することができます。疑似好天の後、天候が急激に悪化するときに気象遭難は多発しています。空を見ることであなたの気象リスクを減らすことができます。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

山の天気を実地(山)で学ぶ講座のご案内

観天望気講座を書いている猪熊隆之や、ヤマテンの気象予報士が講師を務める「お天気講座」 を旅行会社などで実施しています。山は雲を観察したり、学んだりする最高のフィールドです。それは、平地から雲を見ると、どうしても下から見上げてしまうので、平面的にしか見えないのに対し、山では、立体的に雲を捉えられるほか、稜線や尾根上では斜面を昇ってくる上昇気流によってできる雲を体感でき、山を挟んだ両側における雲の出き方の違いも観察できます。また、観天望気だけではなく、登山前日の天気図から押さえておくべきポイントや、荒れた天気の日は、気象リスクを減らすために登山者がおこなうべきことを解説し、安全登山の方法について学びます。
空気は目に見えませんが、雲は空気の状態を語ってくれています。雲の聞えない声に耳を傾けながら、楽しく山を登りましょう。皆様とご一緒できることを楽しみにしています。

氷ノ山夏山開き 「ヤマテン」猪熊隆之氏と一緒に空見ハイキング

日程:6月2日(日) 日帰り ヤマテンポイント3

参加方法や内容、ご参加料金など詳細は“氷ノ山自然ふれあい館 響の森”にお問い合わせください。

http://www.hibikinomori.gr.jp/

名鉄観光やまびこ登山教室 山のお天気を学ぶハイキング
スズラン咲く!入笠山と日本百名山霧ヶ峰(車山)コース

日程:6月15日(土)~16日(日) ヤマテンポイント6

名古屋発着

講師:猪熊隆之(予定)

お申込み方法や内容、ご参加料金など詳細は https://search.mwt.co.jp/mdom/detail/BFMAHKT0680A.html?_ga=2.87522840.1292438405.1553516307-1125171252.1553516307 にてご確認ください。

トラベルギャラリー 霧ヶ峰(車山)空見ハイキング

日程:6月23日(日) ヤマテンポイント3

講師:河野卓郎(予定)

お申込み方法や内容、ご参加料金など詳細は、トラベルギャラリーにお問い合わせください。

http://www.t-gallery.co.jp/hondana.html

2019年度ヤマテン主催「山のお天気講座」

東京会場

第1回 1月12日(土) 終了しました。
第2回 4月6日(土) 終了しました。
第3回 7月7日(日) 初級編「雷と局地豪雨から身を守ろう」(午前)
第3回 7月7日(日)/中級編「専門天気図から予想する夏山の気象リスク」(午後)
第4回 9月8日(日) 秋山の気象について学びます(初級、中級)
第5回 12月1日(日)冬山の気象について学びます(初級、中級)
いずれも午前中に初級編、午後に中級編を予定しています。 皆様の安全登山のお役に立てれば、嬉しい限りです。
それぞれヤマテンポイント1(午前、午後両方ご参加の方は2)

名古屋会場

第1回 5月12日(日)

初級編「クイズで学ぶ山の天気入門」
中級編「夏山の気象リスクを予想するための天気図の活用」
講師:猪熊隆之(予定)
会場:ウインクあいち
会場や講座の詳細、お申込み方法は4月上旬に発表予定です。
それぞれヤマテンポイント1(午前、午後両方ご参加の方は2)

名古屋会場

第1回 5月12日(日)

初級編「クイズで学ぶ山の天気入門」
中級編「夏山の気象リスクを予想するための天気図の活用]
講師:猪熊隆之(予定)
会場:ウインクあいち
会場や講座の詳細、お申込み方法は講習会の約1ヵ月前に発表します。
それぞれヤマテンポイント1(午前、午後両方ご参加の方は2)

参加費は、いずれの会場とも一般の方は3,000円ですが、ヤマテン会員の方は2,000円となります(基礎編、中級編両方をお申込みの方は一般の方5,500円、ヤマテン会員の方は3,500円と、500円割引になります)。

お申込みなど詳細につきましては、会員向けニュースメール及び、ホームページ上でご案内いたします。

http://yamatenki.co.jp/course.php

2019年の日本の山カルチャークラブ

東京会場(アルパインツアーサービス本社) 19時~21時

受講料:3,000円 ヤマテンポイント各1

毎月1回120分(質疑応答含)

講師:渡部 均

山の天気の基本を、実際の山における実例から学びましょう。1回のみの参加でもOKですが、今年度は全ての受講が基礎編ですので、連続受講をお勧めします。前回の復習も必ず行います。

場所:アルパインツアーサービス本社 特設説明会場

4/24(水):山岳気象のキホンと春山の気象遭難(終了しました。)

5/29(水):高気圧と低気圧、前線

6/19(水):梅雨期の気象の特徴とリスク

7/10(水):夏山の気象~落雷と短時間強雨から身を守るための知識~

8/21(水):台風の進路予想図の見方と登山上の注意

9/25(水):気象遭難を防ぐための天気図の見方(秋山編)

10/23(水):衛星画像の利用法

11/20(水):観天望気入門

12/11(水):冬山のお天気入門

お申込み、お問い合わせはアルパインツアーサービス株式会社へ。

http://alpine-tour.com/japan/

※ヤマテンポイントについて

ヤマテンの気象予報士が講師を務める講習会にご参加いただいた皆様にポイントを進呈させていただきます。
机上講座は1回参加につき1ポイント、空見ハイキングなど山での実地講座については1日につき3ポイント(旅行会社企画・実施のものも含みます)を進呈させていただきます。
特定のポイントが溜りますと、素敵なプレゼントを贈呈させていただきます。
詳細につきましては、 http://yamatenki.co.jp/point.php でご確認ください。

雲を学べる絵葉書11枚入りセット(10ポイント溜まるとGET!)

猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/ の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。

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