雲から山の天気を学ぼう(第45回)

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~冬型のときの北アルプス~

今回は、冬型のときに見られる北アルプス付近の雲についてご紹介します。冬型の気圧配置になると、日本海側では雨や雪、太平洋側では晴れという天気になります。ただし、冬型の強弱や、上層の寒気、風向きなどによって天気は大きく変わります。

写真1 塩尻市付近からの常念山脈と後立山連峰

上の写真は平均的な冬型のときに見られる、北アルプス付近の雲の様子です。安曇平(安曇野)や松本平は青空が広がっているのに対し、北アルプスでは雲に覆われています。これは、日本海からの雪雲が北アルプスで上昇させられて雪を降らせる一方で、この雲は山を越えると下降気流によって温められて蒸発していくからです(図1)。

図1 冬型のときの北アルプスの天気

また、常念岳や燕岳、後立山連峰は雪雲の中で全く見えないのに対し、蝶ヶ岳は雲の中から霞んで見えており、有明山などは姿を現しているのは、蝶ヶ岳や有明山は風上側にそれぞれ穂高連峰や燕岳、裏銀座の山など高い山が連なっているので、それらを越えるときに雪雲が弱められるからです。

図2 北アルプスを越える季節風(北西風)

冬型が強くなったり、上空の寒気が強いと、蝶ヶ岳や有明山も雪雲に覆われるようになります。さらに寒気が強まると、松本平や安曇野平でも暗灰色の雲が広がり、雪がちらつくようになります。そのようなとき、北アルプスは大雪に見舞われますので、入山は控えた方が良いでしょう。

一方で、冬型が弱いときは、風下側の平地、安曇野盆地は快晴です。写真2は西側を向いています。写真左側が南、右側が北の方角になります。この日は北西から北寄りの風が吹いており、北アルプスの中でも日本海からの湿った空気が入りにくい南部は晴れています。槍ヶ岳の穂先も見えますね。穂高連峰の辺りのみ、飛騨側(日本海方面)からの湿った空気の影響で雲がありますが、写真1の平均的な冬型のときと比べると、北アルプスにかかっている雲が大分少ないことが分かります。

写真2 冬型が弱いときの北アルプス南部の雲

写真3 山麓線(塩尻-松本)からの北アルプス北部

上の写真(写真3)は、写真2の右側の続きの画像です。雪雲が燕岳を除いた広い範囲で雲がかかっています。特に右側(北側)に行くほど、雲は灰色がかって厚みも増しています。

このように、冬型のとき、北アルプス北部では白馬岳など北に行くほど天気が悪くなり、冬型が弱いと、北アルプス南部では飛騨側の一部を除き、お天気は良くなります。ただし、上層に強い寒気が入ると、南部でも雲がかかることがあります。

これまで見てきたように、山にかかっている雲の感じで、冬型が強いか弱いかが分かります。冬型が強いときは、森林限界より上部では猛吹雪となっているので、稜線での行動は非常に厳しいものになります。それに対して、冬型が弱いときは、行動できる山が多くなります。予想天気図と観天望気を組み合わせて、気象リスクが少ない日に行動するようにしましょう。

冬型が強いか弱いかは天気図で確認することができます。その見方について説明します。

図1 並の冬型のときの天気図(気象庁提供)

上図は写真1を撮った時間帯の天気図です。北アルプス付近(図中▲印)は等圧線が広い所から狭い所へと移りつつある場所です。一般に等圧線の間隔が広いときが弱い冬型で、間隔が狭いときが強い冬型ですから、弱い所から強い所に移るタイミングでの「並の冬型」ということになります。

一方、下図は写真2を撮った時間帯の天気図です。こちらは等圧線の間隔が広く、弱い冬型の気圧配置ということが良く分かりますね。

図2 弱い冬型のとき(写真2を撮影した時間帯)の天気図

次は、冬型が強いときの天気図です。

図3 冬型が強いときの天気図(気象庁提供のものを猪熊隆之が加工)

冬型が強いときは、等圧線の間隔が狭くなります。目安としては東京/名古屋間(図中の赤い矢印)より狭いときです。このようなとき、北アルプスや日本海側の山岳では猛吹雪になります。

それにしても、今年も昨年に続き、この時期まで冬型になる日が少なく、日本海側の山岳の積雪も少なめですね。いつになったら冬将軍が来てくれるのでしょうか?

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/ の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。

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