雲から山の天気を学ぼう(第35回)

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~冬型のときの八ヶ岳の雲~

冬によく現れる冬型の気圧配置。モンゴルやシベリア方面に高気圧、千島列島やオホーツク海、三陸沖に低気圧という“西高北低型”の気圧配置で、天気図上では等圧線が縦縞模様になっている形です。
冬型の気圧配置になると、「日本海側では雪、太平洋側では晴れ」といった天気となりますが(実際にはそんなに単純ではない)、真ん中にある八ヶ岳はどのような天気になるでしょうか?長野県の天気予報(全国の天気予報では長野県北部の長野市の天気が表示されることが多い)では雪になっていても八ヶ岳が晴れることもあり、多くの登山者にとって八ヶ岳の天気はイメージが掴みにくいと思います。

八ヶ岳は内陸にあるため、日本海からの湿った空気が入りやすい北アルプスに比べれば天気が良いのですが、山麓は晴れていても山の上には雲が張り付いていくことが多く、稜線では強風と低温で意外と厳しい気象条件になります。
登山前に天気図を見ることで稜線の強風や悪天を予想することができますが、山麓から見上げたときに、山にかかっている雲によって、どの位天気が荒れているかを想定することができます。その見方について説明していきます。

写真1 平均的な冬型のときに見られる雲

冬型の気圧配置のとき、八ヶ岳山麓では太平洋側の天気に近く、晴れることが多いです。しかしながら、八ヶ岳には写真1のように、ベッタリと雲が張り付くことが多くなります。このようなとき、山の上では霧に覆われて視界が悪くなります。また、弱い降雪が見られることもあり、稜線では強風が吹いています。森林限界より上部では慎重な行動が求められます。

冬型が強くなると、山麓でも雲が多くなり、雲底(雲の底)の高度と雲頂(雲の上端)の高度の差(写真1、2の白い矢印の幅)が大きくなります。つまり、雲が厚くなるということです。そうなると、太陽の光が通らなくなり、雲の底は暗い色に変わってきます。雲が厚みを増すと山全体を覆い、雲の下に降雪が見られるようになります(緑色のカコミのもやっとした部分)。このような雲の特徴が見られるとき、山の上は吹雪となっています。見通しが悪く、低体温症のリスクもありますので、森林限界より上部の行動は控えた方が良いでしょう。

写真3 上層に強い寒気が入っているときの雲

上層に寒気が入ってくると、大気が不安定になり、雲がやる気を出して上の写真のように、もくもくと上方へ発達していきます。夏の入道雲と同じですね。このような雲に山が覆われているときは、雪が強まり、突風や落雷の恐れもあります。冬型が強まっているときに、このような雲が見られるときは、山の上では暴風雪の大荒れの天気になります。もっとも注意が必要な雲です。

写真4 甲斐駒、鳳凰三山付近の雲

東京方面から「特急あずさ」に乗車して茅野、松本方面に向かうと、韮崎を過ぎる頃から車窓の左手に鳳凰三山~甲斐駒の山並みが見えてきます。上の写真のように山が雲に覆われているようなときは、南アルプスの稜線でも吹雪いています。冬型のときには普通、八ヶ岳より南アルプスの方が天気は良くなりますから、このようなときは八ヶ岳では暴風雪の大荒れの天気になっていると思った方が良いです。そのため、北八ヶ岳の樹林帯のコースや、入笠山など山頂は開けていてもすぐに樹林帯に下りられるような、風の影響を受けにくいコースに変更した方が良いでしょう。

写真5 冬型が弱いときの雲

冬型が弱まってくると、標高の低い茶臼山から高見石付近から雲が取れてきて、上の写真のように、雲は天狗岳~権現岳上空に広がるのみになってきます。やがて天狗岳や権現岳も雲が取れて阿弥陀岳が見えてくると、最後まで残っていた横岳~赤岳の雲が取れるのももう一息です。冬型が弱まってくれば、天気が回復していき、稜線の風も弱まっていきます。午前中に写真5のようになれば午後は全域で好天が期待できますし、午後に写真5のようになっていれば翌朝は好天が期待できます。

このように雲を見ることで、山の上の天候の荒れ具合を想定することや、冬型の強さを推測することができます。空からのサインを読み取って、安全な登山を心がけてください。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/ の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。

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