雲から山の天気を学ぼう(第32回)

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~機窓からの観天望気 石垣島編最終回~

飛行機は、いよいよ目的地の石垣島に近づいてきました。そこには“やる気のある雲”が待っていました。

写真1 やる気を出した雲

上の写真は、やる気MAXの雲です。ここで言う“雲のやる気”というのは、上昇気流が強くて雲が上へと成長を続けていくことを言います。詳しくは第10回「やる気のある雲とない雲」をご覧ください。

非常にやる気を出した雲を積乱雲(せきらんうん)と呼びます。古くから入道雲と呼ばれている雲のことです。夏の風物詩でもある、ソフトクリームのような、カリフラワーのような雲で誰もが見たことがあると思います。この雲の下では激しい雨が降っており、落雷や突風などの現象が起きることもあります。

1)積乱雲の一生
**それでは、この雲の生い立ちと構造について見ていきましょう。

写真2 写真1の構造と雲の生涯

まず、海の上にある水蒸気をたっぷりと含んだ空気がなんらかのキッカケで上昇して積雲(せきうん)が生まれます。キッカケは色々考えられますが、風と風がぶつかり合うことや、周囲より温められた空気が上昇すること、山の斜面を上昇すること、前線に伴う上昇気流などが考えられます。

この段階では、雲のやる気だけでは成長できず、他に雲を上昇させてくれる力(これが前述のキッカケ)が必要です。積雲がその力を借りて上昇を続けていくと、雲が自立できる高度に達します。そこからは、他人の力を借りずに、雲は自分の力でどんどん成長していき、積乱雲になっていくのです。

写真2の雲は、一つの雲ではなく、いくつかの積乱雲や積雲が集まった雲の集合体です。一番手前の白っぽい雲は、まだ積乱雲になっていない、生まれたばかりの雲(幼児の雲)です。この段階では、雲の中には上昇気流しかなく、まだ雨が降ることはありません。

その奥にある暗い雲が成長中の若い雲になります。上昇気流によって雲粒が成長して雨粒になると、雨は雲よりずっと重いので落ちてきます。上昇気流が弱いところに雨の通り道ができ、そこは雨粒が空気を引きずりおろしていくので下降気流になります。このため、若い雲の中では上昇気流だけでなく、下降気流も存在します。雲はまだ圏界面に達していないため、上部はもくもくとした形になっています。

さらに、その奥の雲は最盛期の雲(壮年の雲)で、雲はもっともやる気を出し、圏界面に達しています。上昇気流も存在しますが、激しい雨によって雲の中は次第に下降気流のエリアが増えていきます。また、雲は圏界面に達すると、それ以上は上昇できないので、水平に広がっていき、かなとこ状の形になります。

さらにその奥には、同じく、雲の上部がかなとこ状になった衰退期の雲があります。この雲の中では弱い雨が降っており、下降気流のみとなっています。上昇気流がないため、新たな雲は生まれず、雲は雨として落ちていくため、弱まっていきます。

また、雲から少し離れた左側には、ガストフロントに伴ってできた雲があります。ガストフロントは激しい突風を伴うことが多いので、突風前線とも呼ばれます。

成長中や最盛期の雲の中で激しい雨が落ちてくるときに、雨は少しずつ蒸発します。もちろん蒸発しないで地表面まで落ちてくるものも沢山あります。雨が蒸発する際に周囲を冷やすため、下降した空気は次第に周囲より冷えていきます。冷たい空気は重くなるので、下降気流はその重さによって強まっていき、地面に達すると周囲に広がっていきます。地面に達した冷気が放射状に拡散していく際に突風を伴うことがあり、それをダウンバーストと呼びます。この冷気が周囲の暖かい空気とぶつかると、暖かい空気は軽いので冷たい空気の上を上昇し、新たな雲ができるのです。

このように生まれたばかりの雲から老年の雲まで、家族が皆で一緒に暮らしている集合体の積乱雲もあります。このような積乱雲は、同じ場所で次々と新しい雲が発達していくため、長時間激しい雷雨が続くことがあり、より警戒が必要な雲です。

長く続いた機窓からの旅もいよいよ終着地。長い間、お付き合いいただき、ありがとうございました。次回の観天望気は、尾瀬ヶ原で見られた雲のpartⅡになります。ご期待ください。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/ の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。

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