落雷や強雨を予想しようpartⅠ(第38回)

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~落雷から身を守るために~

5月4日、丹沢・鍋割山で落雷により登山者1名が亡くなるという、痛ましい事故が発生した。心よりお悔やみ申し上げます。このような事故が二度と起こらないように、落雷や局地的な大雨から身を守る方法について書かせていただきます。

落雷や局地的な大雨は積乱雲(せきらんうん、別名入道雲)によってもたらされます。積乱雲は積雲(せきうん、別名綿雲)と呼ばれる、青空にポッカリと浮かんでいる雲(写真1)がやる気を出し、モクモクと上方に成長していったもの(写真2)です。

写真1 青空に浮かんだ積雲(綿雲)

写真2 積雲がやる気を出すと積乱雲(発達した入道雲)に inokuma_38_1

写真2のように、発達した積乱雲の下では雷を伴って激しい雨が降ります。1つの積乱雲の寿命は短いため、激しい雨や雷は数十分で落ち着くことがほとんどですが、登山では短時間の大雨や雷が大きなリスクとなります。どのようなリスクがあるかというと・・・

発達した積乱雲による気象リスク
・落雷
・沢の増水、鉄砲水
・土砂災害、落石
・低体温症

これらのリスクから身を守るためには、
1.登山前に積乱雲が発達しやすい(雲がやる気を出しやすい)気象状況かを天気図から確認
2.登山中に、積乱雲が発達する兆候が見られないかを、雲の種類、動きや風の変化から確認

この2つを行うことで、激しい雷雨に遭遇するリスクを減らすことができますが、ここではその方法について書かせていただきます。

積乱雲は、積雲が上方に成長していくことで生まれます。このような状況を、私は「雲がやる気を出している」と呼んでいます。雲がやる気を出す(つまり、積乱雲が発達する)条件は2つあります。

雲がやる気を出す条件
1.上層に強い寒気が入ってくる
2.地面付近に温かく湿った空気が入る

雲がやる気を出す理由については、第10回「やる気のある雲、ない雲」をご覧ください。

1については、500hPa面(高度約5,500~5,800m)の気温を見ることが目安になります。この高度で強い寒気が入ってくると、雲はやる気を出します。目安は季節によって異なりますので、次の表を参考にしてください。

表1 雲がやる気を出す(積乱雲が発達する)目安

時 期 500hPa面の気温
12月~3月 -30℃以下、特に-36℃以下

4月下旬から5月中旬
10月中旬から11月上旬

-21℃以下、特に-24℃以下
9月下旬から10月上旬 -18℃以下
6月下旬から7月上旬 -12℃以下
7月中旬から9月上旬 -6℃以下

2については、850hPa面(高度約1,500m)の相当温位と風予想図をご覧いただくのが良いのですが、見方が難しいので、ここでは2の条件になりやすい気圧配置を覚えるのが良いでしょう。代表的なものは2つです。相当温位予想図の見方について興味のある方は、第38回をご参照ください。

1.寒冷前線が接近

寒冷前線が接近すると、その進行方向前面と前線付近では積乱雲が発達しやすい

2.日本海から前線が南下

日本海から前線が南下してくるとき、その南側300km以内では、積乱雲が発達しやすい。

500hPa面の気温予想図や相当温位予想図、地上の予想天気図は、以下のサイトで見ることができます。

1. 北海道放送(HBC)専門天気図
http://www.hbc.co.jp/weather/pro-weather.html

2.ヤマテン会員ページ 専門・高層天気図
https://i.yamatenki.co.jp/

今回はここまでにしましょう。次号では、落雷事故のあった2019年5月4日に登山すると想定して、登山前日の3日時点の予想天気図で、雲がやる気を出しやすい状況であったのかを確認してみましょう。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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