田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(37)

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余市岳

10月27日。窓から見上げる空は明るく、雲一つない、自然と気持ちがあがります。7時に余市岳に向けて出発。キロロスキーリゾートを通り抜け、スキー場内の林道入り口に1時間ほどで到着。入林届けに必要な情報を書き込んで、林道を進みました。キロロ余市川コースの登山口は、約4キロ進んだ林道の終点にあり、標高は850メートルです。この時期の余市岳の魅力を見つけるため、植生、山の形、紅葉具合、落葉具合など、余市岳の表情を注視しながら歩きました。登山口を8時45分に出発。山頂までのコースタイムは2時間35分(無雪期)ですが、積雪量によってはそれ以上かかることも想定して登山道を進みます。最初は余市川の源流沿いを。川を渡ってからは尾根をどんどん登りました。標高1200メートルを超えると、雪の重みに耐え続ける力強いダケカンバが現れました。太くねじり曲がりながらも上へ上へと伸びています。木の幹の表情を見るには、晩秋、初冬の森が一番いいのかもしれません。さらに進むと積雪量は10センチ位となり、背丈の高い竹笹が雪の重みで倒れて、視界が開けました。そして、この日最初の余市岳とのご対面。太陽の光を浴びた山肌がキラキラと輝き、パラパラカサカサと霧氷が音を立てて溶け落ちていきます。ある場所はたくさんの雪が着いて、木の枝がぐにゃりと曲がり、今にも折れそうなほど。見晴台からコルへ一度下がり、最後の急斜面を雪に足を取られながら登りました。ダケカンバの林を抜けると、もうその先に山頂が見えますが、目前の背丈より少し低いハイマツ帯により登山道が塞がれています。ペースはガクンと落ちましたが、出発から2時間40分で初登頂。山頂は晴れているとはいえ風が冷たく、風上に雪の壁を作り、風が当たらないところで休憩。山頂からは羊蹄山や札幌の山々、日本海、ニセコ連峰や積丹半島まで眺めることができます。麓はまだまだ紅葉が広がり、山の中腹には白樺やダケカンバの白い幹肌や笹の深い緑、そして、足元から広がる銀世界。山がグラデーションのようになり、季節のふれ幅が広いと感じました。

暑寒別岳

11月11日、外は一面真っ白。海岸線に建つ宿でこれだけの積雪だとすると…標高500メートルの避難小屋はいったいどれくらいになるだろう…。考えるのを止め今は気を引き締め、今日できることに徹しようと集中しました。8時過ぎに宿を出発。歩道には今朝の降雪もあり積雪は10センチ。65リットルのバックパックはパンパンになり、重量は25キロほど。久しぶりに背負う重装備と雪道で足元がおぼつかない場面もありましたが、焦らず淡々と避難小屋へ続く道を進みました。標高100メートル、積雪量は20センチほど。標高200メートルを超えると積雪量は30センチを超え、重装備では足が埋まるため、予定よりも早くにスノーシューを装着。まだ、避難小屋まで6キロほど手前。体重と装備を合わせて100キロを軽く超えた体では、なかなかペースが上がりません。標高400メートルで積雪量は30~40センチほど。12時前に到着予定だった避難小屋へは13時過ぎに到着。避難小屋で30分ほど休憩し、明日のために登山道をスノーシューで踏み固めるため、13時40分に避難小屋を出発しました。荷が軽くなり少し体力が回復したとはいえ、一人でのトレース作りは骨が折れます。小屋から3.2キロ進んだところまでで引き返し、明日に備え早めに就寝しました。
11月12日、3時30分起床。いつもなら最初の目覚ましでは起きられませんが、今日は起床から集中していました。5時20分に出発。スノーシューを履き、まだ星空の真っ暗な森の中へと昨日のトレースをなぞるように登り始めました。6時半前に昨日折り返したトレースの終点に到着。ここから先がいよいよ雪との勝負です。気を引き締め、まずは3合目を目指しました。スノーシューを履いても埋まってしまいますが、思った以上にスムーズに登れ、ほぼコースタイムで3合目に到着。休むことなく中間地点の4合目を目指します。すると今度はコースタイムよりも20分も早く到着できました。積雪量は増えていますが、下の雪がすでに根雪となり固まっていることで、埋まりにくくなってきたよう。ここで出発から2時間が経過。出発時は登頂確率が5:5でしたが、ここで逆転して6:4ぐらい。気持ちにかなりゆとりができ、笑顔も自然と増え、力も不思議と湧いてきました。気持ちが上がると同時に青空と太陽の日差しが暑寒別岳を暖かく照らします。5合目までの急斜面を登り切り、5合目でようやく荷を下ろして休憩。7合目、夏場にはお花畑となる雪原で、さらにもう一休み。8合目より上は南からの湿った風により発生した雲により、ホワイトアウトしているよう。山頂を越えて山肌を流れ落ちるようにとめどなく雲が動いています。そのダイナミックで優雅な動きに魅了されました。8合目より下は快晴の空と、太陽の光が新雪に反射してきらきらと輝いています。きっと8合目から先とここは同じ山とは思えないほどに別世界になるでしょう。しっかりと補給し、もう一度集中力を高め、8合目へと急斜面を一直線に登りました。久しぶりのホワイトアウトでも冷静さを保ちながら慎重に進み、9合目標高1450メートルを超え、もう山頂は目前。そして、風速10メートルの暑寒別岳山頂に11時13分に登頂しました。久しぶりに山頂が完全なホワイトアウトになってしまいましたが、それでも十分すぎるほどの達成感です。「今年はここで登り納めだ~だ~だ~!!!」と雄叫びを上げ、「ありがとうございました」と一礼し、穏やかな7合目へと逃げるように山頂から、慎重かつ迅速に下山しました。

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