田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(28)

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蔵王山

3月26日、大きなバックパックを背負いスキーを装着して出発。今日にいたるまで、好天を待ちながら2回の下見登山をしました。営業前のスキー場内からは月山や朝日連峰、飯豊連峰など、山形県を代表する山々が一望できました。出発から1時間半で御田神湿原へ到着。目の前には蔵王山最高峰の熊野岳がくっきりと顔をだしています。吹き溜まりに足をとられながらも着実に登り、刈田岳に登頂。主稜線は風が強く吹き抜けるため、積雪量は少なく、固く凍りついていました。カリカリの雪面をスキーで効率よく進みながら、お釜の縁を回り、最高峰熊野岳を目指します。出発から3時間、6年ぶりとなる登頂の瞬間です。山頂の熊野神社にて参拝させていただきました。そして、蔵王北縦走路へとスキーを滑らせました。予想よりも雪が少なく、アイスバーンと吹き溜まりの連続で、気持ちよく滑らせてもらえる状態とはいきませんでした。標高が下がると、今度は雪の中から低木が顔を出し、止まって進路を確認する必要が。低木帯を抜けるとオオシラビソやダケカンバの森となり、重たい雪に滑走性を奪われました。最後は細い尾根のアップダウンと、張り出した雪庇に気をつけながらの縦走。ようやく、1日目の目的地八丁平へ到着しました。

3月27日、蔵王連峰スキー縦走2日目。山小屋での食にこだわることにし、いつもより豪華な朝食からスタート。蔵王山麓で育った牛からできたモッツァレラチーズと、麓のペンションの自家製ベーコンを使って、ホットサンドを作りました。サイドメニューにオムレツとスープも用意。出来上がりは上々。予定より1時間遅れで出発。出発から30分程で南雁戸山に到着。振り返ると気持ちのよい景色が広がっています。雁戸山までのアップダウンはスキーを脱いで、再び履いて滑り、脱いで登りました。雁戸山から先の下りも同様に。暖かさから汗をかき、修行のような縦走です。最後までこんな感じなのかとあきらめかけましたが、最後のピークから縦走路を外れるとブナ林となり、スピードは出せないものの気持ちよく林間滑走をすることができました。下山口に到着すると、スキーブーツから解放されてようやくほっと一息。なかなか厳しい縦走でしたが、変化に富んだ内容の濃い2日間となりました。

泉ヶ岳、船形山

3月30日、1泊2日の装備を背負い、夜明けから間もなくして出発。2日間で船形連峰を宮城県側から山形県側へと縦走します。宮城県側から登山を開始するのは初めての経験、さらに257座目の泉ヶ岳は初めて登る山。今日はカッパクラブに同期入社した友人と登ります。泉ヶ岳へのルートは主に4つあり、表コースを選びました。泉ヶ岳は古くから信仰の対象で、表コースはいわゆる表参道。しかし4つのルートの中で最も急で険しいそう。登山口から歩き出し、あっという間に急な登りが始まりました。2人で息を荒くしながら、思い出話をして、順調に標高を上げていきます。標高800メートル程にある胎内くぐりを、友人の力も借りてなんとかくぐり抜けました。出発から1時間半で山頂に到着。山頂はとても穏やかな雰囲気です。少し東に下った所からは、見てみたかった仙台の街が少しかすんで見えました。記念写真を撮って北泉ヶ岳へと向かいました。北泉ヶ岳の先には今日目指す船形山も見えます。友人とは北泉ヶ岳で別れました。標高1,000メートルまで下ると、平坦で広大なブナ林が延々続きます。1時間ほどで三峰への登りを開始し、標高1,200メートルを超えてようやくブナ林から脱出。三峰山に登頂する頃にはだいぶ疲労がたまっていましたが、真っ白くきれいな縦走路に元気をもらいました。足元の雪は重く力のいる歩きのため、蛇ヶ岳を超える頃には足取りは重くなっていました。出発から約9時間、最後の斜面を登り切ると船形山山頂が西日を受けて目前に。山頂には雪はなく、朝より少しだけ多くなった雲の奥に、鳥海山がかすかに見えていました。

3月31日、縦走2日目の朝も風は穏やかで日差しも暖かいです。念のためスノーシューではなくアイゼンを履いて、山形県東根市へと続く縦走路を出発。アイゼンがしっかり効きやすい雪質で、サクサクと歩きます。鳥海山と月山の存在感を味わいながら歩きすすめ、時々振り返っては少しずつ見え方の変わる船形山を見つめました。最後のピークで、船形山を見上げながら手作りのホットサンドで休憩。再び立ち上がり、船形山に背を向けて下山口へと駆け下りました。途中で無くなるかと心配していた雪は最後まであり、楽に下山する事ができました。

鳥海山

4月7日、雪山の鳥海山へ1回目の下見登山。目指す目的地は標高1600メートルの河原宿まで。標高差は約1000メートルです。2日間降り積もった雪は標高520メートルで10センチ、標高1000メートル上がれば雪の状態は全く違うでしょう。あいにくスノーシューが手元にはなく、仕方なくつぼ足での登山となりました。樹林帯の中は予想よりも積雪量が多く、序盤から厳しい戦いに。急な尾根を登り切ると、標高1000メートルからは緩やかなブナ林の斜面が1200メートルまで続きました。標高1300メートルの滝の小屋付近では濃霧のため完全なホワイトアウト。これ以上は危険と判断し、急ぎ下山しました。

4月11日、2度目の下見登山は前回よりも条件が良さそうです。4日前に歩いたはずの踏み跡は全くなくなり、積雪量も増えています。スノーシューを履いても足元は10センチ以上埋まり、日差しがあるため気温が高く、雪はあっという間に重たくなりました。大量の汗をかきながら、一本杉まで1時間半ほどで到着。そこから前回引き返すことになった滝の小屋まで、淡々と登ります。滝の小屋から八丁坂まで息を荒げて登ると、広大な河原宿へ。標高1550メートルの河原宿から先は、大きく厚い雲が絶え間なく流れていました。今日はここまで。


4月12日、3回目の下見登山は蔵王連峰以来のスキーを使います。朝方の雨で標高が低いところは雪が重くなっています。一本杉までは灌木の多い急斜面を登るため、何度も切り返しながらジグザグと。それでも前日の踏み跡がしっかりと残っていたため、思った以上に早く一本杉まで登れました。そこから滝の小屋までもあっという間に到着。昨日より出発が1時間以上遅かったものの、河原宿には1時間以上早く到着できました。もう少し標高を上げて1900メートル地点から、誰も滑っていない斜面に一本のシュプールを描きました。んー、納得のいく美しさではありませんでした。1ターンを大切に味わいながら滝の小屋付近まで10分ほどで滑り下りました。標高1000メートルから登山口までは、雪が緩みターンができず、何度も止まりながらスピードをコントロールして下りました。


4月16日、4回目の下見登山。間違いなくこれまでで一番いい登山日和ですが、天気予報では山頂の風は強いとあったため、予定通りに下見登山に。8時すぎに宿を出発。4日前よりも雪が少なく、標高1000メートルの一本杉までは重たい雪で苦戦し、時間がかかってしまいました。そこから先は真っ青な空にくっきりと浮かぶ鳥海山に見とれながら、4度目の滝の小屋まで登りました。途中、やっぱり今日登りたいな~登れるかな~と気持ちが高まりましたが、アイゼンとピッケルを携帯していないことを思い出し断念。河原宿まで登り雪の感触を確かめて、あまり疲労を残さないように早めに下山しました。


4月17日、いよいよ鳥海山山頂へ。6時半に出発。雪はカチカチに凍っていたためシールの摩擦が弱く、雪面の変化に合わせて着脱を繰り返し臨機応変に登りました。一本杉まで来ると一安心。雪はまだカチカチですが、太陽の光が雪面をキラキラと照らし、これまでは見られない景色に出会えました。出発から2時間で滝の小屋に到着。そこから休むことなく八丁坂を登りました。河原宿を進み、正面の外輪山へと続く急斜面へ入ります。標高が上がると共に斜度は増し、標高1900メートルからはスキーアイゼンを装着。標高2000メートルからは一番の斜度となるため、予定通りに左へとトラバース。下からの見た目以上に急斜面です。一歩一歩慎重にスキーアイゼンを効かせて進みますが、じわじわと恐怖心が増していき、腰が引けてしまいました。今は50メートル先の安心地帯まで歩き切ることだけに集中しなければ。無事にトラバースを終えて外輪山へ。外輪山の内側が見え、その中には溶岩ドームの最高峰新山がドンと姿を現していました。眼下には広大な庄内平野と大海原の日本海。風もなく、とても穏やかです。この2週間何度も登り、じっくりと鳥海山と向き合ってきたことで、山が歓迎してくれているように思えました。外輪山最高峰の七高山に立ち寄ってから、外輪山の内へと下りて新山へ。そして出発から5時間半、山頂へ到着。冬が残るこの時期の鳥海山は想像以上に手強いです。山頂からみる日本海はすぐ下に見え、海の中から鳥海山は始まっているようにも見えました。これから向かう東北北部の山々も見え、東北最後の山となる岩木山も。下山は何時間もかかって登ってきた急斜面を数十分で滑り降りました。疲労はこれまでで一番でしたが充実感も一番でした。

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