田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」(24)

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粟ヶ岳

12月9日、今月一番の晴天。粟ヶ岳の全貌が見え、標高1300メートル足らずの山ですが、真っ白なその姿は2000メートル級の山に見えました。太陽が山を越えて来る頃に登山口を出発。三条市山岳会の有志6名が山頂までラッセルをしてくれたという手紙を、今朝受け取りました。その方々の足跡もしっかりと残っています。最初は林道を行き、終点から川沿いに登山道が続きます。橋を渡り、昔は女人結界となっていた元堂を通過。落ちるとただではすまない滝上部を越えて、尾根へととりつきました。標高500メートルを超えると徐々に積雪が増え、薬師堂がある避難小屋に着く頃には積雪50センチ程に。さらに標高を上げていくと、降り続いた雪で灌木は押し倒され、行く手を遮ったり、釣竿のように大きく枝先を曲げたりしています。見事な青空の下、木に積もった雪が美しく映えていました。標高1000メートルを超えると牛の背といわれる細い尾根の先に、粟ヶ岳頂上部が見えました。登山口出発から3時間30分、初めての粟ヶ岳山頂に到着。風はさすがに冷たいものの、眺めは抜群に良く、久しぶりの飯豊連峰はさらに白くなり、これから登る守門岳や浅草岳、御神楽岳も真っ白に。オーシャンビューならぬマウンテンビューを満喫しました。

守門岳

12月13日、午後から天気回復傾向の予報を信じて、登頂60%、途中下山40%くらいの心構えで、8時過ぎに登山口を通過。積雪は12月としては少ないらしく、実際に登っていると当初想像していた状況からはかけ離れていることが分かりました。スノーシュー向きの雪質で順調に登り進めることができます。登山口から主稜線へ出るのにコースタイム2時間40分のところを、2時間で登れてしまいました。標高1200メートル以上は、出発からずっと雲に包まれたままで、山頂が近づくにつれて視界は悪くなり、ホワイトアウトに。空模様に反して雪のコンディションは上々で、宿を出発してからなんと4時間で登頂。正直、こんなにスムーズに登頂できるとは思っていませんでした。風が強かったため穴を掘り、風を遮れるようにして、晴れ間を1時間半待ちましたが、予報よりも回復は遅く下山開始のリミット13時に下山しました。夕食時、翌日の天気予報を見ていると、なんと朝から快晴。この予報を見て翌日再び守門岳に登ることを決めました。

12月14日、昨日よりも自信をもち、そしてリラックスして、昨日歩いた道のりを辿りました。宿出発から3時間、予定通りに10時に登頂。昨日のホワイトアウトからは全く想像もつかない景色が360度惜しげもなく広がっています。青い空の下、一面の銀世界に感動!最後に山頂から眼下の景色を眺め、「昨日があったからこそ今がある。」と強く実感していました。

浅草岳

12月16日、薄明かりの空に月が見え、予報通りの快晴。昨日は浅草岳を1450メートル付近まで下見をしました。冷え込んだおかげで昨日よりもしっかりと雪がしまっていて、スノーシューを履けば沈まずにサクサク歩けます。昨日の踏み跡を辿り、スピードを上げて進んでいきます。渡渉を繰り返し、昨日よりも20分早く尾根にとりつきました。背後の守門岳には太陽が当たり、眩しく輝いています。標高が上がり気温は下がりますが、風が無く、登るのにはちょうどいい感じ。林道の終点を経由して、小さな社に手を合わせ、神様に挨拶と感謝を伝えました。浅草の鐘を一突きし、さらに登り続けます。出発から2時間半で昨日の折り返し地点を通過。降り注ぐ太陽を全身に浴びて、昨日ホワイトアウトで全く見えなかった景色に感動。最高だ~と雄叫びを上げてボッチへと登り、美しい曲線が続く尾根の先へ。そして、少しクラストした雪を踏みしめながら、浅草岳山頂へと初めて立ちました。出発から4時間、昨日の下見を十分に生かすことができました。太陽を浴びながら、新潟県と福島県の山々を2時間ほどマウンテンビュー。雪の上にマットをひいて、ちょっと早めのランチタイムを終えて、12時半に下山を開始しました。

会津朝日岳

12月19日、朝4時半に起床しいつもの朝の準備。しかし、なぜだか気持ちが乗りません。週に2日ほどしかない晴れ間を逃すわけにはいかず薄暗い中を出発。今日は真冬日ですが、麓は全く雪がありません。登山口を8時前に出発。最後の水場までは足首ほどの積雪でしたが、そこからは叶の高手への急な登坂となるため、途中からスノーシューを履いて登ります。登山口出発から1時間が経過しましたが、未だに気持ちが入りません。標高1000メートルを超えたところで足を止めて山に向かって「わぁーーー!」。こんな心身が乖離している状況で登ってしまっていることが、会津朝日岳に申し訳なく、気持ちが溢れました。しかし貴重な晴れ間を逃さないために、登頂という結果を優先するしかありません。登山口から約800メートルを一気に登ると、ようやく傾斜が緩くなり、空を覆っていた雲も少しずつ晴れてきました。標高の高いところも雪が弛んでいたため、足元のコンディションはそれほど良くなく、それでも苛立つ心を置いてきぼりにするようにがむしゃらに登りました。最後の登りへと差し掛かると、雪のコンディションは良くなり積雪量も増えてきました。出発から3時間で山頂へ。ちょうど登頂のタイミングで山頂から西側の雲が晴れて、尾瀬や越後の山々を一望。誰もいない、静かな山頂にて、なぜ「やる気」が湧いてこなかったのかを考えました。原因は明確で、「スケジュール通りに山を登れていなかった」から。難しく厳しく容赦のない冬の山へと挑むことにこそ、価値があるとここまで続けてきましたが、夏場の登山とは違うモチベーションの維持の難しさを、この冬初めて感じました。

御神楽岳

12月22日、御神楽岳へと続く林道を夜明け前から歩きます。登山口は林道入り口から約8キロ先。出発から2時間ほどで登山口に到着。雪はほとんどないまま、2キロほど沢に沿って登ります。豪快な八乙女の滝を高巻きして、さらに奥へ奥へと沢をいくつか越えると標高600メートル地点、そこからは杉山ヶ崎までは350メートルの急登。尾根には全く雪がなく、杉山ヶ崎まではコースタイムの半分ほどで到着しました。標高950メートルを超えて、ようやく雪がしっかりと尾根につきはじめ、スノーシューの出番に。1100メートル付近の熊打場の鎖場をよじ登ると、雲の間から日が差し込み始めました避難小屋を過ぎると緩んでいた雪がしっかりとしまり、昨晩降り積もった新雪が日差しを浴びてキラキラと輝いていました。歩きやすくなったことで、サクサクと御神楽岳へと登頂。山頂からは本峰へと続く吊り尾根が見え、気分もグッと上がりました。気分良く吊り尾根を歩き、30分ほどで4年ぶりの御神楽岳に登頂。眼下には「下越の谷川岳」と言われる岩肌が露出した深い谷間と、4年前に登ってきた岩尾根が見えます。目線を遠くに向ければ、日一日と白さが増していく飯豊山が良く見えました。

七ヶ岳

12月25日、2年目125座目、トータル246座目の七ヶ岳へと向かいます。この先の天気予報によっては、この山が2年目最後の登山となる可能性が高いです。今回は沢の中を登っていくコース、凍った沢底を歩く箇所もあるということで、久しぶりにアイゼンを装着。昨日、一昨日の降雪により一気に積雪が増えた気がしますが、明らかに雪が少なく、この時期としては沢の水が多いと感じました。それでも昨晩の冷え込みにより沢の一部が凍り、随所に自然の造形美を発見。ごま滝の上部は滑床になって沢全体が凍結、ようやくアイゼンが活躍となります。七ヶ岳主稜線手前で、雪から顔を出した笹や灌木を少しだけ掻き分けて、登山口出発から約2時間で合流。七ヶ岳は名の通り、一番岳から七番まで峰が連なっています。ただし、最高峰は少し離れたスキー場のリフト頂上駅でもある高倉山のため、七ヶ岳へと向かう前にそちらを先に登ることにしました。再び合流した場所まで戻り、七ヶ岳へと最後の登りをいきます。12時40分にようやく山頂へ。一等三角点が設置されているだけに、360度申し分ない景色が広がりました。山頂で昼食をとったあとは、予定よりも1時間ほど押していたので、下岳までは急ぎ足で縦走。難所も雪のおかげで難なく通過して、1時間ほどで下岳へ到着。下岳からの一番岳までの山並みを眺め、暗くなる前にとさらに急ぎ下山をしました。七ヶ岳で246座目、残りは55座。ゴールに向かって、来年はゴーゴー!

 

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