田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」⑱

  1. ホーム
  2. > お知らせ
  3. > Topics
  4. > 田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き~Great Traverse~」⑱

八ヶ岳縦走-蓼科山

5月30日、今日から4泊5日の予定で蓼科山から八ヶ岳連峰を縦走します。これまでの旅ではあっという間に駆け抜けてきた八ヶ岳でしたが、今回はゆっくりと歩くことにしました。1日目は白樺湖畔から蓼科山登山口まで車道を行き、スキー場内を登って、鳥居が建つ七合目から本格的な登山道が始まります。将軍平まではどんどん傾斜が増していきます。諏訪富士とも言われている山らしく、山頂に近づくほど登山道は急になっていきました。5年前は女神茶屋から登ったため、今回のルートは初めて。樹林帯の中で時々訪れる展望は北アルプスが見えます。将軍平からはゴロゴロの岩にしがみつきながら山頂へと登ります。5年前濃霧で全く見渡せなかった山頂からの景色を、今回は360度ぐるりと堪能することができます。写真に納めたい景色が多すぎて、山頂でうろうろしてしまいました。ランチを食べてから将軍平を経由して双子山を登り、1泊目の双子池ヒュッテへと到着。1日目から、今回の八ヶ岳は十分に味わえそうな予感がしました。

八ヶ岳縦走-天狗岳

5月31日、北八ヶ岳の入り組んだ主稜線を黒百合ヒュッテまで歩きます。昨日の快晴から一転、朝からどんよりとした空。お昼休憩をした麦草ヒュッテのご主人が北八ヶ岳に生息する苔の調査をされていて、とても珍しい野性動物の糞に生える苔を見せてくれました。なんとこの苔はハエを媒介にしているらしく、苔自らがハエの好きな臭いを出して、おびき寄せるそう。丸山、中山と越えた頃には雨が降りだして、逃げ込むように黒百合ヒュッテへと走りました。
6月1日、黒百合ヒュッテを起点に165座目の天狗岳を登頂後に夏沢峠まで縦走し、そこから中腹の本沢温泉まで下山して日本最高所といわれる野天風呂に入浴し、ランチはしらびそ小屋でと決めて計画を立てました。初めて歩く天狗の庭コースで天狗岳を目指すと、今まで気づかなかった様々な天狗の顔を見つけることができました。西天狗岳を往復し、東天狗岳から夏沢峠、本沢温泉へと下りました。先客は3人、一緒に入りながらそれぞれの今回の目的や予定などで会話が弾みました。見上げる硫黄岳の荒々しさと青空、そして吹き抜ける風が心地よく、ついつい長湯をしてしまいました。コメツガやシラビソの森を抜け、みどり池横に佇むしらびそ小屋に到着。カレーとケーキとコーヒーをいただき、窓際に飛んでくる鳥やリスを眺めながら、1時間ほどのんびりと過ごします。しらびそ小屋を出てから、汗をかきすぎないようにゆっくり中山峠へと登りました。3時過ぎに黒百合ヒュッテに到着。今日のような登山は初めてだったので、とても新鮮で充実した1日を過ごすことができました。

八ヶ岳縦走-赤岳

6月2日。日本では、八ヶ岳の横岳と北アルプスの白馬岳にしか咲かない貴重な高山植物ツクモグサ。氷河期の生き残りで、寒さに耐えるために生えた細かな毛が特徴です。縦走4日目はツクモグサに注目しながら、八ヶ岳最高峰の赤岳へと縦走します。黒百合ヒュッテから天狗岳へと登り、夏沢峠を経由して、硫黄岳へと登ります。硫黄岳山頂は下山する人、天狗岳方面へ縦走する人、赤岳へと向かう人のジャンクションとなっていて、賑わっています。中にはツクモグサを目当てに登って来る人も多いようです。太陽の光で花が開いたり閉じたりするらしく、花開くツクモグサを探す人もいました。赤岳までの最後の登りを登りきると、狭い山頂にズラリと黒山の人だかりが。到着がギリギリとなりましたが、八ヶ岳最高峰赤岳にて12時から始まる開山祭に参加しました。約1時間の神事と式典のあとには、参列者に記念のバッジと護符が配られます。バッジには65周年とあり、長きに渡り受け継がれてきたことがわかります。そして、宿泊は頂上山荘で。午後2時を過ぎると、山頂にいた400人ほどの参列者や登山者の姿はパタリといなくなり、静けさだけが残っていました。
6月3日、朝一に誰もいない赤岳に登頂し、権現岳、編笠山へと縦走しました。セミが鳴き止まない小淵沢へと下りきり、4泊5日の初めての八ヶ岳全山縦走を終えました。新緑の落葉松林からは、南アルプス甲斐駒ヶ岳などが見え、今年もアルプスへと向かう日が来たことを実感。今回の縦走で初めて八ヶ岳の味わい方に気づくことができた気がします。

甲斐駒ヶ岳、鋸岳

6月5日、甲斐駒ヶ岳へは日本三大急登で知られる黒戸尾根を登ります。登山口からの標高差は2200メートル。南アルプス初日が36歳の誕生日ということもいいスタートとなりそうです。登山口で今晩お世話になる七丈小屋のオーナー花谷さんと再会し出発。小屋まではコースタイムで約7時間、約10キロ、標高差は1600メートルほどです。黒戸山前後の鎖場とはしごは緊張感がありますが、刃渡りから先は比較的リラックスして登ることができました。午後2時過ぎに出発から5時間ほどで七丈小屋に到着。キンキンに冷えた水を浴びて火照った体を冷やし、1日目を無事に終えました。夕食は小屋のスタッフさんたちから祝っていただき、特別にケーキまで作っていただきました。
6月6日、七丈小屋を5時半前に出発。1時間半ほどで登頂しました。5年前は濃霧の山頂でしたが、今回は朝日を浴びる南アルプスの山々が見えました。休むまもなく気を引き締めて縦走を開始。鋸岳までの縦走路は入山者が少ないため、黒戸尾根に比べて踏み跡が明瞭ではありません。第二高点に立つと眼下に大ギャップが見え、かろうじて先々のマーキングや鎖が見えました。気持ちを落ち着かせて、靴紐を結び直してから、まずは大ギャップへ。大ギャップの最低地点に下りると、ルンゼの中は大小の落石ばかりで、ちょっとのバランスで全てがその場に止まっているような状況。見上げても、見下ろしても、先へ進むルートが見当たりません。ルートを間違えないよう慎重にここまで辿ってきた視認性の高いピンクテープを探すと、正面の岩壁の中段にピンクテープが。わずかにトラバースが出来るテラス状になっているような部分が見えますが、滑落するリスクが高いのがわかります。半信半疑で岩壁に取りつくと、50センチ幅で続いていました。ちょっとのミスで崖下に転落です。この日最大の集中で、なんとか鹿窓下の鎖場までたどり着きました。鹿窓までの50メートルの鎖を登りきり、鹿窓を抜けて稜線の反対側へと出て、小ギャップを下りて登りきると、第一高点はもう目の前です。短い距離でしたが、距離からは想像もつかない鋸岳の険しさが詰まっていました。六合目小屋まで引き返すほどの体力と集中力、自信が残っていなく、下山は標高差1300メートルの角兵衛沢を谷底まで下りて、北沢峠まで700メートルを八丁坂から登り返すルートを選択。距離と高低差は増えますが、リスクに身をさらす時間が減ることを優先しました。ガレガレの角兵衛沢を一気に駆け下りて、戸台川に飛び込み、全身をアイシングしてクールダウン。それから北沢峠のこもれび山荘へ急ぎました。この日の夕食は、久しぶりに内臓まで疲れ切ってしまい、消費したカロリー分を食べることができませんでした。南アルプス最難関を無事に抜けた自分自身を今日だけは「よくやった」と言ってあげたいです。

アサヨ峰

6月7日。百名山の時に鳳凰三山から甲斐駒ヶ岳へと縦走する予定でしたが、当時は崩落のために通行禁止となり断念。今回5年越しに、足を踏み入れます。前日の天気予報では曇りのち雨だったので、早朝の空模様で判断することにしました。曇天でしたが風は穏やかで、半日天気が持てば行けると判断して5時半に出発。1時間半ほどで栗沢山に到着、辺りを見渡すと囲むように甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、北岳、鳳凰三山が見えていました。すぐ目の前には目的のアサヨ峰が見えます。アサヨ峰が近づくと、富士山が鳳凰三山の右側に姿を表し、左に目を向けると夏毛に生え変わった雷鳥に遭遇。アサヨ峰の山頂に8時過ぎに登頂。初めて見る早川尾根からの鳳凰三山や、霞がかった富士山、四方を囲むように仙丈ヶ岳、北岳、甲斐駒ヶ岳と見渡すことができました。名峰をバランスよく見渡せるアサヨ峰は格好の写真ポイントです。冷たく強い風が吹き付けた瞬間雨が降り出し、南アルプスもどうやら梅雨入りした様子。梅雨入り直前から直後を山頂で迎える貴重な体験をしたあとは、仙水峠を経由して、北沢峠のこもれび山荘へと急いで下山しました。

仙丈ヶ岳

6月9日、今日は天気予報では曇りのち雨です。ルートは北沢峠から仙丈ヶ岳へと登り、再び北沢峠へ戻る予定に。5時半に北沢峠から出発。小仙丈ヶ岳手前までは急登が続き、そこから先は比較的緩やかに登ります。樹林帯は霧が立ち込めて、苔たちは雨により潤い、とても生き生きとしていました。この時期の登山は晴れる日が少ないですが、梅雨は必要な季節、この時しか味わえない出会いや発見があります。小仙丈ヶ岳から先はハイマツが茂り、少し進むと、この日1羽目の雄の雷鳥が姿を現しました。その後も雷鳥に多数出会い、中にはカップルも。濃霧でしたが雨は降ることなく、出発から2時間半ほどで170座目となる仙丈ヶ岳に登頂しました。雲が流れて目の前にたくさんの山が姿を現すことを予感して、山頂で1時間コーヒーを飲みながら待ちました。山頂も低い雲に包まれていましたが、風もなく、比較的落ち着いたコンディションのために、ゆっくり山頂で待つ時間を持てました。午後1時、生き生きとした森に見守られて、北沢峠へと到着しました。

経ヶ岳

6月13日、今日は4年ぶりに経ヶ岳へ登ります。経ヶ岳の山頂付近は朝の雲が取れて、すでに顔を出していました。梅雨の中休みで、蒸し暑くなりそうです。水を多めに携帯し、登山口となる仲仙寺で挨拶をしてから登り始めました。経ヶ岳と呼ばれるようになった由来は、開祖の慈覚大師が観音様を彫った時に余った木に経を書いて山頂に埋めたことだそうです。副住職さんから、もしかしたら五合目付近にササユリがまだ咲いているかもしれないと聞き、それを楽しみに登りました。ところが七合目まで来たものの、残念ながらササユリは終わってしまったようです。伊那谷の眺めが抜群の八合目で上着の汗を絞り、C3fitのサポートタイツには大量のハエやブヨが汗を吸いに群がりました。吹き抜ける風で火照りも収まり、山頂へと向かいました。九合目から先はシラビソやコメツガの原生林となり、アルプスらしさを垣間見ました。登山時に見られなかった伊那谷や南アルプスが、下山時にはスッキリと晴れ渡り、経ヶ岳一番の眺めに出会うことができました。下山すると夏の陽気に包まれ、中央アルプス前哨戦は上々の滑り出しとなりました。

木曽駒ケ岳

6月14日、今日から5泊6日の中央アルプス縦走です。登山口までは12キロ、バックパックがズシリと重いです。今回は桂木場登山口から木曽駒ヶ岳を目指します。馬返しまでは傾斜が緩く、何度も折り返しながら少しずつ標高を上げ、ちりめん坂を登っていきます。馬返しからは尾根道となり、胸つき八丁からは急斜面が続き、主稜線に出る前の七合目でヘロヘロになっていました。補給を済ませて森林限界を抜けると別世界が。花こう岩特有の大小の岩がハイマツの山肌から顔を出し、木曽駒ヶ岳がドンと迎えてくれます。将棋が強くなりそうな名前の将棊頭山を登りきると、南アルプスのパノラマと雪化粧の富士山がちょっとだけ顔を出していました。予想よりも雪が多く残っていた馬の背へと進み、少しずつ標高を上げて、午後2時に木曽駒ヶ岳登頂。最後はさすがにバテ気味でしたが、登頂の直前に雲が流れて、5年ぶりに山頂からの景色を拝むことができました。山頂には伊那側と木曽側それぞれの神社が山頂に建てられていて、両方参拝し、登頂させていただけたことへの感謝を伝えました。

空木岳

6月17日、荒天のため宝剣山荘で2日間停滞をし、今日から縦走の再開です。予報通りに嵐は過ぎ去ったものの、2日間の冷え込みにより外がカリカリに凍りついています。気温が上がるのを待って出発しましたが、宝剣岳の険しい鎖場は全く溶けていない所も多々ありました。凍りついてカチカチになった鎖を力一杯振って、氷を落としながら慎重に登ります。予定よりも時間はかかりましたが、無事に抜けることができました。その先は、空木岳まで大きなアップダウンがつづくものの、比較的気持ちよく縦走ができました。嵐が空気を浄化してくれたのか、西には愛知県のビル郡や御嶽山などがはっきりと見え、東には南アルプスがズラリと見渡すことができます。午後2時に木曽殿山荘に到着、今夜と明日の飲み水を補給するために、木曽義仲の力水へ寄り道をしました。約5リットルの水を補給し、本日最後の登りを空木岳へと登ります。登頂時は山頂が霧に包まれていましたが、長居はせずに宿泊地の駒峰ヒュッテへと下りました。夕暮れにはいつの間にか雲が晴れて、素晴らしい日没を味わうことができました。

南駒ヶ岳、越百山、安平路山

6月18日、昨日は霧に包まれた空木岳山頂が今朝はどこを見てもいい眺めです。南駒ヶ岳には1時間ほどで到着。今日は他に越百山、安平路山と1日3座を登ります。南駒ヶ岳からハイマツにびっしりと包まれた女性的な姿をした越百山までは順調に進みます。越百山が雲に包まれていたため、1時間ほど晴れるのを待ちましたがあきらめて南越百山へ。南越百山を無事に通過し笹藪の入り口に来ると、なんと!笹藪が刈り払いされています。もしかして安平路山まで!?と期待しましたが奥念丈岳までで、安平路山までの笹藪との格闘が始まりました。順調に松川乗越まで進み、浦川山への最大の登り返しが目の前に。標高差は約200メートル、急斜面のため笹が頭上を覆い掻き分けてもなかなか体を引き上げていくことができません。我慢我慢と言い聞かせて標高を上げていきますが、とうとう限界を迎えてしまい「あーくっそー!うわぁー!!」と声を荒げ、笹藪と喧嘩をしてしまいました。最後はなんとか心を静めて、予定の時間に山頂に到着。最後はヘロヘロとなり、喜びを出すほどの力は残っていませんでした。
6月19日、朝一に縦走最後の山頂となった摺古木山に。最後まで気を抜かないように大平宿まで歩ききりました。下山後に五右衛門風呂に入り、久しぶりの町へと下りました。

熊伏山

6月22日、熊伏山は手放して喜んで登れる山ではありません。山で一番会いたくないヒルが大量に存在する山なのです。そのため左手には大量の塩!コウモリが寝床にしているトンネルを抜けて、蒸し暑さを少し和らげてくれる谷間を沢に沿って登ります。ヒルが足にくっついていないか、常に監視しながらいつでも塩で退治できるようにしました。ヒルに血を吸われると、傷口からの血が止まらなくなったり、痒みが出たりします。それ以上に嫌なのは、なんといってもあの動きと体型。獲物を見つけてからの早さとしつこさには驚きます。今日は頭の中がヒルでいっぱい。結局、山頂までかなりの急登が続くためヒルの存在を忘れてしまい、10匹ほどのヒルに包囲網を突破され、内2匹に侵入を許してしまい吸血されてしまいました。ヒルの恐怖と後半の急登でかなり体力を消耗してしまい、ヒルの手が及ばなそうな山頂に着いたときにはどっと疲れがでました。たまたま山頂で会った子供からたくさんの元気を分けてもらい、元気よく熊伏山から水窪へと下山することができました。

<過去の記事>

  • 入会お申込み
  • ヤマモリについて
  • 講演会のお知らせ
  • ネットショップ エマグストレージ
  • メールマガジン受付
  • jRO事務センター便り
  • JROチャンネル
  • JRO×ココヘリ
  • 山と自然のネットワークコンパス Compass

田中陽希と学ぶ jROの山岳遭難対策制度