日本の国立公園の山の魅力⑱「雲の平」

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回想の山旅・雲ノ平

「ゆり椅子の登山者」となって3か月となります。緊急事態宣言はまずは終わりましたが、登山についてはまだ自粛ムードが続きます。特に山岳インフラの閉鎖や中止、オープン延期で、安全かつ楽しく登れるまでには時間がかかりそうです。
その中、スマホアルバムを繰ると山行フォトの数々が回想を助けてくれます。

「最後の秘境、雲ノ平」を知ったのは今から50年くらい前でしょうか。いつかは行きたいと思いつつ、アプローチの長さ、交通費の高さ、日数などの理由からずっと行けず仕舞いでした。
4年前、所属山岳会の夏山計画で「雲ノ平から双六岳」が発表され、長年の夢がかなうとばかり参加しました。

雲ノ平へは北海道・九州はもとより関東・関西からもなかなか遠い道のりです。
この時は新宿から富山駅まで夜行バス、朝に到着しますが乗り継ぎの関係で市内に一泊。翌朝早朝に富山地鉄で有峰口へ。駅前からさらに夏山バスに乗車して折立まで。このバスは前日までに予約していないと乗車できません。東京出発から三日目の10時過ぎようやく登山口です。
コースは樹林帯から開けた尾根道、急登やなだらかな登りをこもごも経て開けた台地に出ます。
広い広場に建つのが太郎平小屋。小屋の前には水道の蛇口があり、たっぷりと冷たい水が給水でき乾いたのどを潤しました。
ここは北アルプスのジャイアント、薬師岳と黒部五郎岳への交差点で左右いずれのコースへも心を誘われます。しかし、我々は登山口で出した登山届のとおりまっすぐ薬師沢への道を辿ります。
しばらく木道、樹林帯のなだらかな道、一部に急下降路、また樹林、開けた草原と湿原、小さな沼など変化に富んだ登山路が続き、やがて轟々ととどろく薬師沢の沢音。この音が聞こえれば今夜の宿の薬師沢小屋が間近です。
薬師沢小屋はまさしく日本の正調の山小屋、素朴で懐かしい趣で出迎えます。玄関入り口には冷たい沢水を引いた桶のクーラーがあり、ビールやコーラが泳いでいます。小屋の下には沢にかぶさるように広いベランダ、ここで飲み物をもって今日1日の健脚を労わります。
翌朝はいよいよあこがれの「最後の秘境、雲ノ平」です。小屋からすぐ吊り橋、はしごと続き沢を渡ると急登が始まります。朝一番のアルバイトに息が切れます。はしごや滑りやすい箇所も多く、気が抜けない道です。

2ピッチ(50分歩き10分休憩×2回)登り、樹林帯を抜けるといよいよ雲ノ平です。庭園の木道に乗る最初の一歩に胸が高鳴ります。まず足を踏み入れるのはアラスカ庭園です。ハイマツと庭石、緩やかな起伏、バックには青空と雲、まさしく神の手になる造園の妙です。もし残雪が残っていれば白妙の衣が広げられているかのようです。もしもハイマツをライチョウが渡ればもう完璧な舞台ですが、あまり多くを望みすぎると下山時のお天気が心配になります。


庭園はギリシャ、アルプス、スイス、祖父、日本と続き、所々のベンチで憩うことができます。北アルプス開拓期にここに至り、名付けた人がうらやましいです。あえて言えば「ちょっと平凡なネーミングかな、もう少し詩的でもいいのに・・・」と先人を恐れぬひと言。
庭園内には祖父岳(じじだけ)、祖母岳(ばばだけ)の小ピークがあり、各庭園の連なりを眺望できます。
我々は朝、薬師沢小屋を出て3時間強で着いたので、今日の宿泊先の雲ノ山荘には昼前にチェックインできました。なので、昼食後 水とおやつ、雨具をもってゆっくり散策して心ゆくまで庭園を楽しみました。
雲ノ平山荘は、木造りのガッチリした2階建ての山小屋です。2階はロフト風の大部屋の寝室です。木の香りがさわやかな小屋でした。ただ、2階ロフトの垂木が低くて、2回頭をぶつけ痛い思いをしました。小屋の食事もおいしいと評判で、山では珍しい石狩鍋を堪能しました。

さて、ここは北アルプス北西部中枢なので、ここからは北に、南に、東に、西にとさらに山路を辿ることができます。近隣には高天原があり温泉も楽しめます。
もちろん太郎平小屋まで戻って、黒部五郎岳や薬師岳への後立山のジャイアンツ縦走コースも待っています。
我々は翌朝、南東の縦走路を進み黒部源流の沢を渡りお花畑も楽しんで、黒部五郎岳を見て「来年は登りに来るから待っててね」とあいさつを送り、三俣蓮華岳から双六岳を経て双六小屋へ一泊です。
最終日は新穂高温泉へとひたすら下り、痛む足と乾ききった喉を温泉のお湯と冷えたビールで癒しての帰路でした。

「日本の最後の秘境・雲ノ平」への夢をかなえて数年ですが、回想の中でもまだまだみずみずしい思い出を蘇らせくれます。
行ってよかった。行けてよかった。ありがとう、雲ノ平です。

日本山岳救助機構合同会社  若村 勝昭
(写真提供:本間渡)

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