日本の国立公園の山の魅力⑭「三宝山」

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秩父多摩甲斐国立公園の山のあれこれ

秩父多摩甲斐国立公園は、奥秩父山塊を中心とした埼玉、東京、山梨、長野の一都三県に跨る国立公園で、1950年(昭和25年)に「秩父多摩国立公園」として指定された。ところが、同公園の指定エリアの37パーセントを占める山梨県の名称がないことから、同県から名称変更の要望がだされて、2000年に現在の名称に変更されたとのこと。
公園内には、「日本百名山」に選定された金峰山、甲武信ヶ岳、瑞牆山、雲取山、両神山、大菩薩嶺などの山を抱えるが、今回はこれらの山とは別に、埼玉県の最高峰とされる「三宝山」について少しお話しをしたい。

<埼玉県最高峰の三宝山のこと>
もう7年以上前のことになるが、「埼玉県の最高峰」の記事を検索していたところ、埼玉県在住者と思われる方の以下のような記述を見つけた。
「私が子供の頃、埼玉県の最高峰は甲武信ヶ岳と教わったが、最近になって三宝山という山に変わっているが、何故こうなったのか分からない」
実のところ、この頃筆者は、三宝山の存在すら知らなかったし、ネットでも今のように都道府県の最高峰が話題となることは少なかったように記憶しているが、少し興味をそそられたので、甲武信ヶ岳の山行を機に三宝山のことを調べてみた。

◆山名の歴史
ウィキペディアの記事によると「三宝山」は以下のように説明されている。
木暮理太郎の『山の憶ひ出』では、江戸時代には、現在の木賊山、甲武信ヶ岳、三宝山は、一つの山との認識
から、その山名を三方山または国師岳(國師嶽)あるいは拳岳としていたが、明治時代に行われた陸地測量部
の地図作成作業の過程で、最も高い峰に敬意を表して三宝山という名を与え、一等三角点を置いたとされる。
これらの記述の前半部分は納得できるが、最高峰だから一等三角点を置いたとすることやあたかも陸地測量部が三宝山の命名に関与したような記述については、地名決定のルールにのっとればにわかに信じることはできない。

◆三宝山山頂の所在地
国土地理院が作成した「点の記」よると、三宝山山頂の所在地は、長野県川上村であり、三角点が埋設された最高地点まで埼玉県の県境まで11mから12m離れていて、これは川上村作成の2500分1基本図でも明確になっている。ちなみに「点の記」の点名は、「国師岳2」である。
しかし、何故、県境が山頂を通過せず、少し離れた場所であるかは川上村当局も不明であるとのこと。

 
(クリックするとPDFファイルが開きます)

◆地形図に示された県境表示の変遷


大正2年発行50000分1地形図「金峰山」   昭和48年発行50000分1地形図「金峰山」   昭和51年発行50000分1地形図「金峰山」 
最初に三宝山の地形図が発行されたのは大正2年であるが、県境の表示は山頂を通過せず、わずかに外れている。
この後、昭和41年の地形図までは、県境表示に変更はない。ところが、昭和51年の地形図では県境記号が三角点記号に接するように変更された。当該地図は同年発行の25000分1地形図を編集したものであり、これ以降、県境が山頂を通過しているので、埼玉県の最高峰であると言う誤解が生じたような気がしてならない。
この変更について国土地理院に尋ねたところ、関係市町村には境界について確認してもらっているので、問題はないと認識しているとのことであったが、当事者の川上村に尋ねると、誰がこれを承認したかは分からないと回答している。

◆埼玉県の最高峰の見解
埼玉県ホームページではいつからか「埼玉県の最高峰は三宝山」となっていて、2017年12月にも「埼玉県最高峰の三宝山に山頂標識を設置しました」との記事が掲載されている。
以前、埼玉県庁に三宝山が埼玉県の最高峰である根拠を問い合わせしたが、国土地理院の「日本の山岳標高一覧 ―1003山―」に埼玉県の最高峰と記載されているので、そのようにしたとの回答があった。
従って、同県の最高峰が甲武信ヶ岳から三宝山に変更されたのはこの辺りではないか。
厳密には三宝山は、埼玉県の最高峰ではなく、最高地点となる。
しかし、長野県と境を接する甲武信ヶ岳から十文字峠に至る登山道や道標の整備等は埼玉県が行っていて、はいわば「埼玉県が実効支配している山」であることは間違いない。

◆平成26年発行の25000分1地形図で県境表記が戻る
ところが、その後、平成26年に地図の改定があり、その地図の県境表記をみると、再び山頂を通過しないように修正されていることが分かった。でも三宝山は相変わらず埼玉県の山であると思う。
長野県人の筆者としても埼玉県の最高峰とすることに何ら異論を唱えるものではない。

 

文:日本山岳救助機構(jRO:ジロー) 小林 明仁

 

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