【寄稿】韓国の山岳遭難事情

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2020年1月25日に開催された公益社団法人 東京都山岳連盟「新春の集い」でソウル山岳連盟の国際交流委員として日本と韓国をつなぐ活動をされている盧泰亨(ロウ・テヒョン)さんと知り合いました。盧さんは現在、介護用のロボットを開発するために日本に留学しています。盧さんはソウル山岳救助隊のボランティア活動の手伝いもされていたそうです。その盧さんに韓国での山岳遭難について聞いてみました。
この内容は皆様にすぐにお知らせしたかったのですが、新型コロナウィルス感染拡大による自粛の影響で、本日まで発表を控えていました。

もし韓国の山で遭難したら…

韓国ソウル特別市 ソウル山岳連盟*****
元国際交流委員 盧 泰亨(ロウ・テヒョン)

もし韓国の山で遭難したら、躊躇せず韓国119状況室に電話で連絡してください。日本語が通じる隊員もいるといいますが、常時待機しているわけではありません。できれば緊急事態だからこそ韓国語での救助要請のほうが誤解もなく初動がスムーズです。
基本的に韓国での山岳遭難の救助費用は外国人も無料です。
119は日本と同じく消防ですが、韓国全消防署(韓国119状況室)の代表番号なので、情報が中央に集約され、そこから地元の消防署や国立公園事務所に連絡が行くと思われます。韓国の登山道には500mごとに番号の表示板があるので、その番号を伝えることで場所の特定が早まります。

韓国の登山道の500mごとにある番号表示板

【jROメルマガ編集部注:韓国語での救助要請例】

「山岳遭難です」          サナク チョナン イムニダ。

「救助をお願いします」       クジョ ルル プタックトッリムニダ。

現在の位置、×××山〇〇〇番です」  チグムン ウィチ ヌン ×××サン 〇〇〇(数字は英語で)
*                 ポノムニダ

「遭難者は××人です」         チョナンチャ ヌン 〇〇(数字は英語で)サラム イムニダ。

「日本人です」           イルボノサラム イムニダ。

「韓国語はわかりません」      ハングンマル モルムニダ。

初期対応は消防や国立公園特殊山岳救助隊が連携して当たりますが、遭難事故が重なるなど、自分たちだけで解決できない状況のときには各地域にある民間救助隊に協力を求めます。民間救助隊は韓国の主要な17の国立公園にあり、約700人が活動していて出動要請から30~60分で遭難現場に駆け付けることが可能です。
韓国では紅葉の時期に登山者が多く、とくに入山者の多い秋のソラクサンや全羅北道のテドゥンサンでは民間救助隊の存在が大きく、消防、国立公園特殊山岳救助隊、民間山岳救助隊が協力して山岳事故に対応しています。
そんな民間山岳救助隊が実際に出動した行方不明者の探索報告をご紹介いたします。

天登山(チョンドゥンサン)行方不明者探索報告書

●報告者:ソウル山岳救助隊キム・ヒョンス隊長
●発生:2019年12月10日
●概要:観光バスを利用した団体登山でウォンジャンソン村から入山し、チョンドゥンサンの頂上を経由して高山村(コサンチョン)に下山する予定の1名が下山せず救助要請があった。
●行方不明者:ユンさん(仮名65歳)

旅行会社の募集で集まった団体で登山者の中に行方不明となったユンさんと面識のあるものはいなかった。10時に登山を開始。10時40分にはユンさんが遅れ始め、12時30分にはチョンドゥンサン頂上というユンさんからの主催者への携帯電話での通話が最後となった。14時40分に他の全員が下山した時にはすでに連絡が取れなくなったため、17時に主催者が消防と警察に救助要請と失踪届を出した。

17時過ぎ、チョブク山岳救助隊のイ・ワンヨン隊長から「登山者1名下山せず行方不明」の連絡を受けた。私(注:キム隊長)は現場ではなく、事務室で遠隔で支援することにした。まず警察に遭難者の携帯基地局の受信情報の提供を依頼すると同時に、救助要請した主催者に連絡を取って登山情報を得た。

この時点で警察、消防、民間の大醫山(テドゥサン)救助隊が現場に出動している。

警察から連絡があり、遭難者の携帯電話の電源が切れる直前の16時47分、基地局の位置が仁川里(インチョンリ)170-1番地と判明した。この基地局はチョンドゥンサン頂上から直線距離で8kmの場所にあった。

救助隊にはこの基地局を目指すように指示を出した。18時20分ごろ遭難者の携帯電話の位置を逆追跡できる電波情報を得ようと119状況室に連絡したが、情報取得には令状が必要な事項だといわれた。

チョブク警察庁状況室に隣接するワンジュ警察署状況室に協力を求めたところ、ワンジュ警察署から連絡があり、18時30分ごろの遭難者の携帯電話の近くの基地局が判明、面墨山里山(ミョンムクサンリサン)87-13大醫山自然休養村の近くだった。チョンドゥンサン頂上からは直線で約5kmの距離である。救助隊にすぐに指示を出したが、過去の経験から遭難者は基地局の500mの範囲にはいないと考えられた。そこでジョンパ(電波)ヌリサイト(周波数総合情報システム)に接続してチョンドゥンサン近くの基地局情報を確認しようとしたが、メンテ中で情報を得られなかった。ジョンパヌリは電波塔の位置と電波塔から発する電波を受信する機器(携帯電話やスマホ、ラジオなど)の位置を推測できる韓国内に張り巡らさせたシステムのことである。そこでジョンパヌリのチョン・ソンムン課長に連絡して実務者のパク・グンチョル代理と遠隔で基地局の分析を行った。

ちょうど約1ヵ月前に大醫山(テドゥサン)一帯の基地局のカバレッジシミュレーション資料を分析したことがあり、このことから今回のケースでは天登山(チョンドゥンサン)山頂から下山予定地の高山村(コサンチョン)の標高約400mの地点と出た。

イ・ワンヨン隊長が率いるチョブク山岳救助隊に連絡して、最後の受信基地局からの半径捜索を中止して、下山予定地の高山村(コサンチョン)の標高約400m地点を中心とする尾根を分散して捜索するように要請した。

20時40分ごろ、下山道の標高約400mのところで顔面に傷を負い低体温で震える遭難者のユンさんを発見して救助したとの連絡を受けた。

今回の捜索救助ではジョンパヌリの助けが大きかった。今後の山岳捜索の仕組みにおいてジョンパヌリの基地局情報をさらに強化して活用すれば、ゴールデンタイム(生存時間)内の救助が可能になると信じている。

現在は警察の令状があってこそ可能な方法だが、これではゴールデンタイムを逃す可能性があり、緊急な状況では困難なことが多い。携帯電話の電源が切れる前の基地局の受信記録を知ることができれば早期発見につながると思う。今後の改善と対応策の策定を急ぎたい。

チョンドゥサンの捜索風景
チョンドゥサンの救助隊
ソラクサンで行われた救助訓練    
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田中陽希と学ぶ jROの山岳遭難対策制度