雲から山の天気を学ぼう|(25)~快晴のち巻雲 in 百々ヶ峰(岐阜市)~

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~快晴のち巻雲 in 百々ヶ峰(岐阜市)~

今回は中日ツアーズで行われた、山の天気ハイキング中に見られた雲について紹介します。この日のハイキングでは、これまで学んできた雲が沢山現れましたので、良い復習になると思います。
ハイキングの舞台は岐阜市最高峰の百々ヶ峰。当日は、素晴らしいお天気で眼下には長良川がキラキラと輝きながら流れ、岐阜市街が手の届くような距離にあり、遠く名古屋の高層ビルも見ることができました。反対側には白銀に輝く御嶽山や乗鞍岳、中央アルプスや南アルプス、恵那山と絶景が広がっていました。
この好天をもらたしたのは高気圧です。高気圧は下降気流が起きるため、雲が発生しにくく、天気が良くなります。この日の天気図(図1参照)を見ると、東北地方の太平洋沿岸に高気圧があります。この高気圧に覆われて岐阜市を含む中部地方は良い天気になりました。

図1 ハイキング当日の地上天気図(△印は百々ヶ峰の位置)

上空にはほとんど雲がありませんでしたが、養老山地には鈴なりの積雲(せきうん。別名わた雲)が現れていました。

写真1 養老山地上空の積雲とスモッグ

この雲は伊勢湾からの湿った空気が養老山地にぶつかって上昇し、発生したものです。「海側から風が吹く、風上側の山で天気が崩れる」という山の天気のキホンを目の当たりにすることができました。

図2 平地では天気が良く、山で発生する雲の仕組み(山の天気リスクマネジメント「山と渓谷社」より)


※詳細は第9回をお読みください。

また、この雲とは別に、山の下の方に少し汚い空気の層が見られます(写真2の青い囲み線)。これは人為的に排出された窒素酸化物などによるスモッグです。この層はデコボコしておらず、スモッグの上端が綺麗に同じ高さで揃っています。
これは、上端の下側では冷たい空気が溜まり、上側では温かい空気となっていて、大気が安定した状態になっているためです。大気が安定していると、雲は上昇することができず、左右に広がっていくため、上端がそろいます。雲海の場合も同様です。詳しくは第10回をご参照ください。

さて、高気圧が東へ遠ざかるにつれて午後は巻雲が広がってきました。天気が崩れるときに最初に現れる雲です。上空の水蒸気量が多く、湿った感じの雨巻雲となっていました(写真2)。

写真2 雨巻雲が広がる

雨巻雲と晴れ巻雲は第6回(バックナンバー)をご参照ください。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

山の天気予報のご案内

ヤマテンでは、全国18山域59山の山頂の天気予報や気象予報士の解説、大荒れ情報や「今週末のおすすめ山域」、各種予想天気図、ライブカメラ、ヤマレコの最新記録などをご利用いただける「山の天気予報」を運営しています。また、GW連休期間中の前には週間予報(4月25日と30日の2回発表予定)、GW期間中のおすすめ山域(4月26日と5月2日発表予定)を発表します。ご登録方法やサービスの詳細につきましては https://i.yamatenki.co.jp/ でご確認ください。
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山の天気を実地(山)で学ぶ講座のご案内

観天望気講座を書いている猪熊隆之やヤマテンの気象予報士が講師を務める「お天気講座」を旅行会社で実施しています。山は雲を観察したり、学んだりする最高のフィールドです。それは、平地から雲を見ると、どうしても下から見上げてしまうので、平面的にしか見えないのに対し、山では、立体的に雲を捉えられるほか、稜線や尾根上では斜面を昇ってくる上昇気流によってできる雲を体感でき、山を挟んだ両側における雲の出き方の違いも観察できます。また、観天望気だけではなく、登山前日の天気図から押さえておくべきポイントや、荒れた天気の日は、気象リスクを減らすために登山者がおこなうべきことを解説し、安全登山の方法について学びます。
空気は目に見えませんが、雲は空気の状態を語ってくれています。雲の聞えない声に耳を傾けながら、楽しく山を登りましょう。皆様とご一緒できることを楽しみにしています。

スズラン咲く入笠山/花と空を愛でる山旅 1泊2日

日程:6月16日(土)~17日(日) ヤマテンポイント6※
企画・実施 毎日新聞旅行
6月中旬、入笠山はスズランの白い花が可憐に草原を彩られ、カラマツの新緑が美しい季節です。また、入笠山は南北、中央アルプス、富士山を望む大展望のピーク。山によって天気が違うことを学び、雲見を思う存分楽しみます。宿泊はお食事に定評のあるマナスル山荘。星空にも期待したいですね。
お申込み方法やご旅行代金などツアーの詳細については下記URLでご確認ください。
http://www.maitabi.jp/parts/detail.php?course_no=15169

コマクサ満開の岩手山 空見ハイキング 1泊2日

日程:7月10日(火)~11日(水) ヤマテンポイント6※
企画・実施 アルパインツアーサービス
「南部片富士」の名で知られ、美しい山容を持つ岩手県最高峰の岩手山。空が開けており、空見、雲見を存分に楽しめます。下りはコマクサの大群落では日本一との呼び声高い焼走りルートを通り、花見も満喫します。
お申込み方法やご旅行代金などツアーの詳細については下記URLでご確認ください。
http://www.alpine-tour.com/japan/2018_04/091a.html

2018年8月以降の空見ハイキング、登山ツアーにつきましては下記URLでご確認くだい(8ページ)。
http://www.alpine-tour.com/japan/2018-04-catalog.pdf

山の天気を学ぶ机上講座のご案内

ヤマテン主催「山のお天気講座」(大阪、名古屋会場)

名古屋 日程:5月19日(土) ヤマテンポイント午前、午後各1ずつ※
大阪  日程:5月20日(日) ヤマテンポイント午前、午後各1ずつ※
「山岳気象の基本と気象遭難を防ぐための天気図の見方(初級編)」(10:30~12:00)
「ヤマテンの賢い利用方法~夏山の気象遭難を防ぐために~(中級編)」(13:30~15:30)
名古屋会場:日本陶磁器センター https://asakusa-koukaidou.net/home/access.html
大阪会場 :大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)
***** http://www.dawncenter.jp/shisetsu/map.html
講座の詳細やお申込みにつきましては、以下のページからお願いします。
名古屋会場:https://blog.goo.ne.jp/office-weather/e/ef5e66b79c5ee1ca7d16319f416115ed
大阪会場: https://blog.goo.ne.jp/office-weather/e/432031c792e98944ea8c33896b45eddc
※お申し込みの受付は、4月20日(金)の正午からとなります。それまでは、お申込みフォームが開きませんので、ご注意ください。また、定員に達した場合につきましても、お申込みフォームが開かなくなりますのでご了承下さい。

ヤマテン主催「山のお天気講座」(東京会場)

日程:5月26日(土) ヤマテンポイント午前、午後各1ずつ※
「梅雨期の天気入門(初級編)」(10:30~12:00)
「衛星画像、相当温位予想図の見方(中級編)」(13:30~15:30)
会場:台東区環境ふれあい館ひまわり第1・2集会室
東京、大阪、名古屋会場ともに参加費は、一般の方は3,000円ですが、ヤマテン会員の方は2,000円となります(基礎編、中級編両方をお申込みの方は一般の方5,500円、ヤマテン会員の方は3,500円と、500円割引になります)。なお、会員割引は、開催当日に会員になっていただいてる方が対象となります。

※ヤマテンポイントについて
ヤマテンの気象予報士が講師を務める講習会にご参加いただいた皆様にポイントを進呈させていただきます。
机上講座は1回参加につき1ポイント、空見ハイキングなど山での実地講座については1日につき3ポイント(旅行会社企画・実施のものも含みます)を進呈させていただきます。
特定のポイントが溜りますと、素敵なプレゼントを贈呈させていただきます。
詳細につきましては、 http://yamatenki.co.jp/point.php でご確認ください。

雲を学べる絵葉書11枚入りセット(10ポイント溜まるとGET!)

2018年のヤマケイ登山教室 山岳気象講座の日程が決まりました。
東京会場(アルパインツアーサービス本社) 19時~21時
受講料:2,000円 ヤマテンポイント各1ずつ

第1回*  4月24日(火) 山岳気象の基本と地上天気図の見方
第2回 5月15日(火) 高気圧と低気圧、前線
第3回 6月5日(火) 梅雨期の気象の特徴とリスク
第4回 7月17日(火) 落雷と短時間強雨~夏山のリスクを避けるために~
第5回 8月21日(火) 台風のリスクを予想する
第6回 9月18日(火) 秋山の気象~低体温症から身を守るための知識~
第7回 10月16日(火) 観天望気~雲から学ぶ天気の基本~

お申込み、お問い合わせはアルパインツアーサービス株式会社へ。

http://www.alpine-tour.com/japan/_j_office.html

http://www.alpine-tour.com/japan/

猪熊隆之(いのくまたかゆき)
国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/ の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。

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