雲から山の天気を学ぼう|(19)八ヶ岳と北アルプス北部における雲 ~南東風~

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八ヶ岳と北アルプス北部における雲 ~南東風~

今回は八ヶ岳と北アルプス北部に現れる雲の特徴のうち、南東風が吹くときの雲について見ていきましょう。今日は、下記天気図のように等圧線が北西から南東方向に走り、下層の風向は南東風です(天気図からの風向の読み取り方は山岳気象大全P29参照)。

図1 平成25年6月12日3時の地上天気図(気象庁提供)

太平洋から富士川を通って甲府盆地方面(南東方向)から湿った空気が入る八ヶ岳では風上側にあたる南部ほど雲が厚く(写真1)、風下側の北八ヶ岳では晴れています(写真2)。ここまで極端に分かれることは珍しいのですが、典型的な風向と山岳地形による天気の違いが分かります。

写真1 風上側が右(南八ヶ岳)、風下側が左(北八ヶ岳)

写真2 風下側の北八ヶ岳は晴れている

図2 風向きによる天気の違い

北アルプス北部でも後立山連峰の東面(白馬村方面、猿倉、八方尾根、栂池)と、立山・剣岳方面で天気が全く違っております。この方面ではウィンドプロファイラ(図3)で見ると東風が卓越しており、東側から湿った風が入る白馬連峰東面では雲が発生してガス(写真3)に、西面の立山連峰では晴れ(写真4)という極端な天気の違いが表れています。ただし、いつもこうなるとは限りません。南東風に変わると白馬連峰東面も晴れることが多くなり、湿った空気の入りこみ具合や、大気の安定度、風の強さによっても天気が変わります。天気は奥が深いので、必ず〇〇だから〇〇になる、とは限らないので難しいですね。そこが面白い所でもあるのですが。

図3 ウィンドプロファイラのデータ(気象庁提供)

写真3 風上側の白馬村から見た白馬連峰
提供:白馬村http://www.vill.hakuba.nagano.jp/livecam/livecamera.php?id=1

写真4 風下側の室堂からの立山連峰
提供:立山黒部アルペンルート http://www.alpen-route.com/livecam/index.html

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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空気は目に見えませんが、雲は空気の状態を語ってくれています。雲の聞えない声に耳を傾けながら、楽しく山を登りましょう。皆様とご一緒できることを楽しみにしています。

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http://alpine-tour.com/japan/2017_04/12g.html
e-mail: kokunai@alpine-tour.com
電話:03-3503-0223

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e-mail: kokunai@alpine-tour.com
電話:03-3503-0223

ヤマテン&オフィス気象キャスター お天気講座(机上)
初級編:秋山の天気入門(午前)/中級編:秋山の気象リスクを予想する

9月9日(土)にに東京会場で実施します。詳細につきましては、今後、ヤマテンホームページ http://yamatenki.co.jp/course.php でご案内させていただきます。また、ヤマテン会員の皆様はニュースメールでもお知らせいたします。

猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/ の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。

 

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