雲から山の天気を学ぼう(第23回)

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~雲ができるキッカケpartⅡ~

夏山で遭遇したくないもののひとつ、落雷や局地豪雨をもたらす雲は、積乱雲(せきらんうん)と呼ばれる、発達した入道雲です。また、冬において日本海側で豪雪をもたらす雲でもあります。つまり、夏、冬問わず、登山者にとって危険な雲です。

雲の中には「やる気のない雲」と「やる気のある雲」の2種類あることはこれまでにも説明してきました(第10回参照)。入道雲は後者になります。
しかしながら、雲がやる気を出すためには、まず雲そのものができなければなりません。前回学んだように、雲を発生させる要因は
1. 水蒸気が十分にあること
2. 上昇気流
ということになります。

1.の水蒸気が十分にあるかどうかは、体で感じることができます。じめっとした感じがするとき
*  は水蒸気が空気中に沢山あるときです。日本の夏は蒸し暑いですので、夏場においてはカラっ
*  とした日を除いては常に水蒸気が十分にあると思ってください。特に、海上の空気は水蒸気が
*  多いので、海側から風が吹いてくるときは、水蒸気をたっぷり含んだ空気が入ってきています。

2.の上昇気流が起きるところは
a)低気圧、台風の中心付近とその周辺
b)前線とその周辺
c)山の斜面
d)日射で温められた所
e)風と風がぶつかり合うところ

で発生します。a)からc)は天気図上で上昇気流が発生する場所を予想できます。また、前回は
d)日射で温められた所 について学びました。そこで、今回は e)風と風がぶつかり合うとこ
ろで発生する雲について見ていきます。

Ⅰ.風と風がぶつかり合って発生する上昇気流

図1.風と風がぶつかり合って上昇気流が発生する仕組み(山岳気象大全より)

上の図は、地上付近で二つの異なる方向から風が吹いている様子を表しています。両側から風が吹いてくると、空気は衝突を避けて上昇していきます。ここで上昇気流が生まれるのです。

Ⅱ.風と風がぶつかり合う場所

それでは、どのような場所で風と風がぶつかり合うのでしょうか?実は、ぶつかり合いやすい場所というのは決まっています。例えば、図2のように冬季の日本海にできる「日本海寒帯気団収束帯」や、図3のように、関東南部から伊豆半島にかけてよくできるシアーライン( 風向・風速が急に変化しているところを結んだ線)も風と風がぶつかり合いやすいところです。

図2 日本海で発生する収束帯(山岳気象大全より)

図3 関東南部で発生するシアーライン(山岳気象大全より)

図4 山谷風(山岳気象大全より)

また、夏季においては谷風(たにかぜ)同士がぶつかり合うことで上昇気流が起きることが多くなります。谷風とは、山間部で日中吹く、山麓から山頂へ向かう風のことです。この風は地面と同じ高さの空気との温まりやすさの違いにより生じます。日中は地面が太陽の熱を吸収し、それに接している空気を温めます。そのため、地面のすぐ近くにある空気は、地面から離れた場所にある、同じ高さの空気より温度が上昇します。空気は温まると軽くなるため上昇していくため、地面付近の空気が上昇していき、山麓から山頂に向かって風が吹きます。これを谷風と呼び、特に風の通り道となる沢や谷では強まります。谷風は地面が温められる日中、次第に吹き始め、午後になると強まっていきます。この谷風同士がぶつかり合う所で上昇気流が起き、雲が発生するのです。

写真1 谷風がぶつかり合ったところにできる雲

上の写真は、ヤマテン事務所からの八ヶ岳方面(東側)を見たものですが、右奥側(南東)からの風と左手前側(北西)からの風がぶつかって上昇気流が発生し、そこで雲ができています。雲がやる気ができる条件がそろえば、入道雲が発達し、落雷や局地豪雨をもたらすのです。

それでは谷風と谷風がぶつかり合う場所はどのような場所でしょうか?
もっともぶつかり合いやすい場所は、2つの川の分水嶺です。特にそれぞれの川がほぼ直線で結ばれるような形のとき、風はぶつかり合いやすくなります。これは地図を見ることである程度想定することができます。

図5 諏訪盆地付近の谷風の吹き方

上図は長野県諏訪湖周辺の地図ですが、松本盆地などで温まった空気が谷風によって山の方へ吹き寄せられていきます。一方、諏訪湖は湖なので周囲より空気は冷やされます。そこから吹き出す空気と、谷風によって北西から吹きあがる空気がぶつかる塩嶺峠付近は雲が発達しやすく、雷多発地帯となっています。
また、茅野市付近も諏訪方面からの風と小淵沢方面からの風がぶつかり合う場所です。下の写真は、車山から見た塩嶺峠で発生した積乱雲です。諏訪湖方面と松本盆地からの風がぶつかり合って雲が発生している様子が分かります。

写真2 塩嶺峠で発生した積乱雲

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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第1回 1月14日(日) 終了しました。
**初級編:山の天気のキホンと気象遭難を防ぐための天気図の見方
中級編:高層(専門)天気図の見方

第2回 4月7日(土)
**初級編:高気圧と低気圧、前線
**中級編:低気圧の発達と春山の気象遭難

第3回 5月26日(土)
**初級編:梅雨期の天気入門
**中級編:衛星画像、相当温位予想図の見方

第4回 7月8日(日)初級編:雷と局地豪雨から身を守ろう
**中級編:高層(専門)天気図から予想する台風と落雷、局地豪雨

第5回 9月8日(土) 初級編:秋山の天気入門
**中級編:過去の気象遭難から学ぶ、秋山の天気実践編

第6回 11月23日(金・祝) 初級編:冬山の天気入門
**中級編:地上、高層天気図を使って冬山を安全に登ろう

< 大阪会場 >
第1回 5月20日(日)開催
**初級編:山岳気象の基本と気象遭難を防ぐための天気図の見方(初級編)
**中級編:ヤマテンの賢い利用方法~夏山の気象遭難を防ぐために~(中級編)

第2回 12月9日(日)開催
**初級編:高気圧、低気圧、前線
**中級編:冬山の気象リスクを予想するための天気図の活用

< 名古屋会場 >
第1回 5月19日(土)開催
**初級編:山岳気象の基本と気象遭難を防ぐための天気図の見方(初級編)
**中級編:ヤマテンの賢い利用方法~夏山の気象遭難を防ぐために~(中級編)

第2回 12月8日(土)開催
**初級編:高気圧、低気圧、前線
**中級編:冬山の気象リスクを予想するための天気図の活用

 

猪熊隆之(いのくまたかゆき)
国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/ の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。

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