雲から山の天気を学ぼう(第22回)

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~雲から読む!冬の八ヶ岳の天気~

冬は、冬型の気圧配置(以下、冬型)と呼ばれる気圧配置になることが多くなります。冬型とは、シベリアやモンゴル方面に高気圧、千島列島近海に低気圧という西が高く、東が低い気圧配置で「西高東低型」とも呼ばれ、日本付近では等圧線が縦縞に走ります。

図1 冬型の気圧配置
※図中のHは高気圧、Lが低気圧

冬型になると、日本海側は雪や雨、太平洋側は晴れという対照的な天気となり、「八ヶ岳=内陸、太平洋側だから晴れ」というイメージを持つ人が多いようです。しかしながら、実際には雲に覆われることが多く、冬型の強弱や上層の寒気、谷の動向によっては強い吹雪となって稜線での行動が厳しくなることもあります。以下、冬型の時に現れる典型的な雲のパターンについて見ていきましょう。

分かりやすくするために、冬型を強い冬型、並の冬型、弱い冬型に分けましょう。

ここでの強い冬型とは、日本付近で等圧線が込み合っている場合(目安として自分が登る山の辺りにおいて東京/名古屋の距離より間隔が狭いとき)、弱い冬型とは等圧線の間隔が広くなっている場合です。

図2 強い冬型の気圧配置

図3 弱い冬型の気圧配置

写真1 冬型のときに八ヶ岳を覆う雲

さて、上の写真は冬型の時に八ヶ岳を覆う雲です。冬型は一般的に初日がもっとも強く、次第に弱まることが多くなります。八ヶ岳で雲が覆われるのは冬型の気圧配置が強まるときです。雲に厚み(赤い矢印部分)があり、雲の上端が多少デコボコしています。このようなときは上層の寒気も強く、八ヶ岳の稜線では吹雪になっていることが多いです。
一方で、下の写真も冬型のときの雲ですが、写真1に比べて雲の厚みが小さく、雲が薄いことを示しています。また、雲の上端の高さが綺麗に揃っています。これは上下の温度が逆転している安定した層があるため、それに蓋をされて雲がそれ以上成長できないからです。

写真2 写真1より冬型が弱まったときの雲

このようなとき、風雪は少しずつ落ち着く傾向にあります。ただし、雲に覆われている間は視界が悪く、稜線の風は強いと思った方が良いでしょう。さらに冬型が弱まってくると、下の写真3のように、雲がまばらになり、積雲が主体となってきます。そして次第に雲も取れて晴れてくるのです。写真2から3のようになったときは、天候が回復するときです。覚えておきましょう。

写真3 弱い冬型のときの雲

また、寒冷前線が近づいてくるときや、上層に強い寒気を伴った谷が接近すると、下の写真4のように積乱雲が発生し、山麓でも降雪があり、稜線では暴風雪となります。稀に雷を伴うこともあります。このような雲が西や北西方向から近づいてくるときは、すぐに森林限界より下、あるいは山小屋へ避難しましょう。

写真4 上層の寒気が強いときの雲

冬型のときは、八ヶ岳よりも南アルプスの方が天候が良いことが多く、八ヶ岳では雲がかかっていても甲斐駒ヶ岳や鳳凰三山では晴れていることが多いものです。しかしながら、写真5のように、これらの山でも雲がかかっているときは、南アルプスでも吹雪となっており、八ヶ岳では本格的な雪となっています。そのようなときは、森林限界から上部での行動は控えましょう。

写真5 南アルプスにかかる雪雲

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。
写真、文責:猪熊隆之

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)
国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。

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