雲から山の天気を学ぼう(第21回)

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~雲ができるキッカケpartⅠ~

今回は、夏山で遭遇したくないもののひとつ、落雷を避けるための観天望気についてです。落雷や局地的な豪雨をもたらす雲は、積乱雲(せきらんうん)と呼ばれる、発達した入道雲です。この雲は、“空気がキレて雲がやる気になったとき”にできます。雲には“やる気のある雲”と“やる気のない雲”があることは、第10回に掲載されていますのでご参照ください。さて、どんなに空気がキレていても、雲がやる気になっても、雲そのものができないと雲はやる気を出せません。

雲を発生させる要因は

  1. 水蒸気が十分にあること
  2. 上昇気流

ということになります。

  1. の水蒸気が十分にあるかどうかは、体で感じることができます。じめっとした感じがするときは水蒸気が空気中に沢山あるときです。日本の夏は蒸し暑いですので、夏場においてはカラっとした日を除いては常に水蒸気が十分にあると思ってください。特に、海上の空気は水蒸気が多いので、海側から風が吹いてくるときは、水蒸気をたっぷり含んだ空気が入ってきています。
  2. の上昇気流が起きるところは

a)低気圧、台風の中心付近とその周辺

b)前線とその周辺

c)山の斜面

d)日射で温められた所

e)風と風がぶつかり合うところ

で発生します。a)からc)は天気図上で上昇気流が発生する場所を予想できます。
そこで、今回はd)日射で温められた所 について雲を見て判断する方法を学びましょう。

 

日射で温められる所にできる雲

空気は温まると膨張し、軽くなります。そのため、温められた空気は周囲より軽くなって上昇していきます。水蒸気を含んだ空気が上昇すると、雲ができるのです。

写真1 八ヶ岳東面(小海線側)で発生する積雲

上の写真は八ヶ岳の西側から八ヶ岳方面を見たものです。八ヶ岳の裏側(東側)で雲が発生していることが分かります。これは、夏場の太陽は北東方向から昇り、東、南東方向に動いてきます。そのため、西面よりも東面の方が温まりやすく、また東面の方が太平洋からの湿った空気が入りやすいので積雲が発生しています。日射によって温められやすい場所では、雲がやる気になったときに積乱雲(雷雲)が発達しやすくなります。盆地に接した山では、盆地は周囲より温められやすいので、温まった空気が日中の谷風で上昇させられて雲が発達しやすくなります。そのような山で午後、登山をおこなうのは危険です。
さて、次は平野部でできる雲について見ていきましょう。

写真2 関東平野上空の積雲

上の写真は好天のときに良く見られる雲です。こちらも積雲です。あまりやる気がないですが(笑)。平野部など広い場所では、広い範囲が一斉に温められることで対流が発生します。対流というのは熱の輸送 方法のひとつです。熱の輸送で誰もがイメージするのは伝導によるものです。伝導とは、じかに接しているものを温めることです。例えば、熱いお茶を注ぐと湯飲み茶碗が熱くなります。これはお湯が直接、湯飲み茶碗を温めているからです。この方法で空気を温めてみましょう。図1のように、日中、太陽高度が高くなってくると、地面が熱せられます。すると、地面に接する空気も温められます。その上の空気にも熱が伝わり温まっていきます。下から上の空気へ徐々に熱は伝わっていきますが、空気の容量が大きいので、この方法ですと、空気全体を温めるのに膨大な時間がかかってしまいます。

図1 伝導による空気の熱輸送

そこで、空気はもっと効率的に熱を輸送する方法を取ります。広い範囲の地面が温められて、そのすぐ上の空気も温められるとします。まだ温められていない上の方の空気との温度差が大きくなると、伝導による熱輸送では間に合わなくなり、対流という方法を取ります。これは図2のように、温められて軽くなった空気が上昇し、上空の温められていない、冷たい空気が下降することによって、温かい空気を上に、冷たい空気を下の方に同時に運ぶ方法です。この方法だと伝導よりはるかに効率的に熱が輸送できます。この図の中で温められた空気が上昇するところで雲ができます。これが写真2に写っている雲です。このような雲が見られたときは、「空気が必至になって熱を運ぼうとしているんだ、」と思ってください。

図2 対流による空気の熱輸送

次回は、e)の風と風がぶつかり合うところ で発生する雲について学びます。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)

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