雲から山の天気を学ぼう(第16回)

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 八ヶ岳における雲 ~南西風と北風~

今回は八ヶ岳に現れる雲の特徴のうち、北風と南風が吹くときの雲について解説していきます。八ヶ岳は南側に南アルプスが連なるため、南風のときは、南西から風が回りこむことが多いです。南西風の場合も入笠山~守屋山といった1,500m~2,000m前後の山を越えるため、比較的天気が崩れにくいという特徴があります。ただし、雲の高度が2,000mを大きく越えるときや湿った空気が強いときは、これらの山を越えて雨雲が八ヶ岳まで侵入します。下の写真は、雲の高さが2,000m~3,000m程度で湿った空気がそこまで強くないときのものです。

写真1 南風が吹くときの雲
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図1 撮影ポイントとその周辺の地図
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このときのカメラの位置は、図1(上図)をご参照ください。写真の右側が南南西、左側が北北東ということになります。右側では雲がやや発達して雲底が暗くなっています。これは、この雲の中に入笠山~守屋山があり、湿った南西風がこれらの山の風上側である伊那側(南西側)で上昇し(図中緑色の矢印)、雲が発達しているからです。一方で、写真の左側に行くにつれ、雲は弱まっています。これは山を越えて下降気流となり(図中オレンジ色の矢印)、雲が蒸発していくためです(図2参照)。

図2 山で発生する上昇気流による雲
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写真2 北風のときの八ヶ岳で発生する雲
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次に、北風の場合について見ていきましょう。撮影場所は写真1と同じ場所ですが、真東の方を向いています。つまり、写真の右側が南、左側が北ということになります。北風が吹いていますので、左から右に雲が流れていき、八ヶ岳でも北側の蓼科山や北横岳で上昇気流が発生します。このため、これらの山で雲が発生していますが、それが右側に行くと弱まって雲が消えています。右側に行くと南八ヶ岳という、北八ヶ岳より高い山がありますから、そこでさらに上昇気流が発生して雲が再び発達しそうなものですが、なぜ雲が発生しないのでしょう。それは、湿った空気が左から右に流れていき、北八ヶ岳の山に遮られて南八ヶ岳に行くときには弱まってしまうことと、もうひとつは大気が安定した層があり、その高度が南八ヶ岳よりも低いからです。大気が安定していると、それより雲は上方へ成長できません。したがって南八ヶ岳よりも低い高度までしか雲は昇っていけず、南八ヶ岳を上昇することができないのです(図3参照)。

図3 大気が安定しているときの雲(山岳気象大全より)
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※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

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猪熊隆之(いのくまたかゆき)

国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテン http://yamatenki.co.jp/ の代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「プロトレック」開発アドバイザー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7,700m付近まで)、剣岳北方稜線冬季全山縦走などの登攀歴がある。著書に山の天気にだまされるな(山と渓谷社)、山岳気象予報士で恩返し(三五館)、山岳気象大全(山と溪谷社)。共著に山の天気リスクマネジメント(山と渓谷社)、安全登山の基礎知識(スキージャーナル)。

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