雲から山の天気を学ぼう(第12回)

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八ヶ岳における雲 ~東風~

今回から数回にわたって、八ヶ岳に現れる雲の特徴について解説していきます。今回は東風が吹く気圧配置です。高気圧の中心が東へ抜けると、それまでの西風が東風に変わります。したがって、日本海側の山岳を除いては、西風が東風に変わると天気が下り坂に向かうことが多くなります。特に、八ヶ岳ではそれが顕著に表れます。

低気圧や前線が接近して天気が崩れてしまうと、霧に覆われて山では視界が効かなくなりますので、今回は、低気圧や前線が遠くにあり、山麓は晴れているのに山で雲がかかるときの状況について見ていきましょう。

東風が吹くときの八ヶ岳の雲

下記の写真は2013年6月2日(日)、開山祭当日の硫黄岳から見た赤岳と横岳です。

写真1 硫黄岳からの赤岳(右)と横岳(左)
inokuma_12_1

6月2日の朝は晴れでスタートしました。ところが、日中になると、上の写真1のように、八ヶ岳の稜線の東側から雲が湧きあがって稜線を覆うようになってきました。それは何故でしょうか。

図1 2013年6月2日(日)9時の地上天気図
inokuma_12_2

ここで、当日の天気図を見てみましょう(上図参照)。関東の南海上には低気圧があり、そこから南西諸島方面に梅雨前線が延びています。一方、カムチャッカ半島付近にはオホーツク海高気圧があって、北日本に勢力を伸ばしています。低気圧や前線は八ヶ岳からかなり離れており、特に天気を崩す要素は見当たりません。また、八ヶ岳付近では等圧線の間隔が、風が弱いことが想定されます。
ただし、天気図を良く見ると、等圧線の向きから、弱いながらも東風が吹くことが想定されます。この風の発生源は、カムチャッカ付近にあるオホーツク海高気圧です。オホーツク海付近に中心があることが多いことから、こう呼ばれています。この高気圧は海上にあるので、湿った空気を持っており、これが関東平野から八ヶ岳方面に入ってきます。八ヶ岳の東側には関東山地がありますが、八ヶ岳より標高がかなり低く、その東側には関東平野を経て太平洋が広がっています。そのため、東風が吹くと、太平洋からの湿った空気が入りやすく、天気が崩れることが多いのです。この湿った空気が八ヶ岳の山腹に沿って上昇し、どんどん雲が湧いてきました。一方で雲が山を越えると下降していき、雲は次第に蒸発して消えていきます。そのため、写真1で山の東側(左側)では雲に覆われているのに、西側(右側)では雲が消えているのです。

同じように、八ヶ岳で東風が吹くときの天気図が図2です。本州のはるか南海上に台風があり、等圧線が東西に寝ていて、東風が吹く形です。図1のときよりも等圧線の間隔が狭く、より風が強いことが想定されます。

図2 2012年9月28日の天気図
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実際、雲の写真(写真2)を見ていただくと、八ヶ岳の奥の方(東側)から雲が湧いてきて、山を越える手前側(西側)では雲が消えて晴れています。

写真2 2012年9月28日の茅野側山麓(八ヶ岳西側)から見た八ヶ岳
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このように、山と海との位置関係や、山のどちら側から風が吹いているかによって山の両側や、里と山の上とで天気が大きく変わることがあるのです。山麓から山の雲のかかり具合を見ることによって、ある程度、天気のイメージを作ることが大切です。

 

猪熊隆之(いのくまたかゆき)
全国18山域、59山の天気予報、大荒れ情報、専門天気図、雨雲レーダー、山のライブカメラ、ヤマレコの最新記録などが見られる「山の天気予報」(https://i.yamatenki.co.jp/)サイトを管理している株式会社ヤマテン(http://yamatenki.co.jp/)の代表。

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