雲から山の天気を学ぼう(第7回)

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天気が崩れていくときの雲 partⅠ<低気圧の北側と温暖前線編>

前回は、低気圧や前線が近づいてくるとき、つまり天気が崩れていくときに、最初に現れる雲について学びました。ただ、雨巻雲(あめけんうん)が現れても必ず天気が崩れる訳ではありません。天気図で低気圧や前線など、天気を崩す要素が見当たらないかを確認するとともに、その後の雲の変化を見ることが大切です。そこで、今回は、低気圧が近づいてくるときに、どのように雲が変化していくかを見ていきます。

図1 低気圧と天気分布(山岳気象大全 猪熊隆之著:山と渓谷社より)

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春や秋の時期、日本付近を通過する低気圧は温帯低気圧と呼び、温かい空気と冷たい空気がぶつかり合うと発生します。暖気と寒気が共に強い場合には、低気圧は発達します。温帯低気圧は、温暖前線と寒冷前線という2つの前線を持つことが多いです。温暖前線は低気圧の進行方向前方に、寒冷前線は後方にあります。従って、低気圧が接近してくるときは、温暖前線が先に接近してくることになります。

下の図(図2)をご覧ください。これは図1におけるA-Bの断面図です。温暖前線は冷たい空気が元々あったところに、温かい空気がやってくることで、その境界にできます。温かい空気は軽く、冷たい空気は重いので、温かい空気は冷たい空気の上を乗りあげていきます。つまり、前線は地上付近にのみあるのではなく、進行方向に向かって上空に延びています。

図2 温暖前線の構造(山岳気象大全 猪熊隆之著:山と渓谷社より)

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上昇気流が起きるところで雲は発生します。冷たい空気の上を温かい空気が乗り上げて上昇していますので、前線付近では地上近くで上昇気流が発生し、前線から離れるにつれて(Bに近づくにつれて)上空高いところで上昇気流が起きています。つまり、前線に近いほど低いところから雲ができ、前線から離れるにつれて高い雲になっていきます。

低気圧が接近すると、最初に高い雲が現れ、次第に低い雲に変わっていくのはそのためです。

典型的な雲の変化は以下の通りです。

  • 巻雲(けんうん)→②巻層雲(けんそううん)、または③巻積雲(けんせきうん)→④高層雲(こうそううん)→⑤乱層雲(らんそううん)

 

 

巻雲、巻層雲、巻積雲は「晴れ」、高層雲に覆われると「くもり」、乱層雲に覆われると「雨」ということになります。

それでは、実際に低気圧や温暖前線が近づいていくときの雲の変化を見ていきましょう。

①雨巻雲

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②巻層雲、薄雲

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③巻積雲(けんせきうん・うろこ雲)

時々、雨巻雲が現れた後に、巻層雲が現れず、全天に巻積雲が現れることがあります。このようなときは、低気圧が急激に発達したり、台風が近づいてくるなど大きな天候悪化が予想されるときです。特に注意しましょう。

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④高層雲(こうそううん・おぼろ雲)

巻層雲や巻積雲が高層雲に変わってきたら、山では数時間後に雨が降り出すことが多くなります。この雲に覆われてきたら、雨を覚悟した方が良いでしょう。

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⑤乱層雲(らんそううん・あまぐも)

雨や雪を降らす雲です。山ではあまり遭遇したくないですね。

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文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

猪熊隆之(いのくまたかゆき)

全国18山域、59山の天気予報、大荒れ情報、専門天気図、雨雲レーダーなどが見られる「山の天気予報」(https://i.yamatenki.co.jp/)サイトを管理している株式会社ヤマテン(http://yamatenki.co.jp/)の代表

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観天望気講座を書いている猪熊隆之が講師を務める「お天気講座」を旅行会社で実施しています。山は雲を観察したり、学んだりする最高のフィールドです。それは、平地から雲を見ると、どうしても下から見上げてしまうので、平面的にしか見えないのに対し、山では、立体的に雲を捉えられるほか、稜線や尾根上では斜面を昇ってくる上昇気流によってできる雲を体感でき、山を挟んだ両側における雲の出き方の違いも観察できます。また、観天望気だけではなく、登山前日の天気図から押さえておくべきポイントや、荒れた天気の日は、気象リスクを減らすために登山者がおこなうべきことを解説し、安全登山の方法について学びます。 空気は目に見えませんが、雲は空気の状態を語ってくれています。雲の聞えない声に耳を傾けながら、楽しく山を登りましょう。皆様とご一緒できることを楽しみにしています。 山の天気実地講座の詳細は、以下のサイトでご確認ください。

ヤマケイ登山教室(アルパインツアーサービス企画・実施) http://yamatenki.co.jp/service6.php

クラブツーリズム、毎日新聞旅行
http://yamatenki.co.jp/prof.php

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